第II部 参考研究報告-ドイツにおける年金保険制度・医療保険制度・介護保険制度の動向
参考研究報告-ドイツにおける年金保険制度・医療保険制度・介護保険制度の動向
1. ドイツにおける社会経済環境の最近の動向
1.1 ドイツにおける社会経済環境の特殊事情
(1)ドイツ統一に起因する社会支出
東西ドイツの統一は旧西ドイツの人々にとって二重の経済的負担を加したといわれる。一つは、旧東ドイツの生活水準とくにインフラ・ストラクチャーを西並に引き上げることであり、もう一つは、社会保険の積立がなかった旧東ドイツ人に対しても西側並の社会保障給付をしなければならなくなったことである。
(2)欧州連合(EU)にかかる費用
ヨーロッパ統合に際しても、ドイツはブリュッセルのEU本部から配分されてくる負担金以上に統合のために必要な様々な資金(高額)を支払わねばならぬ国の中の一つである。(図表1参照)
(3)東欧拡大とNATO同盟にかかる費用
ヨーロッパ共同体は東欧諸国(ポーランドやハンガリーなど)の加盟でさらに広がり、また、NATO(北大西洋条約機構)の支援と技術開発のために必要な費用負担がかなり加わってくるものとみられている。
(4)外国人移住者にかかる費用
ドイツは過去に海外労働力の流入を図り、かつ、そのことに寛大であったため、東欧、アフリカ、中近東、そしてその他の不安定地域の民族大移動の目的地になってしまっている。また一時的に流入してきた人々もドイツに定住する者が少なくない。その理由としては、しばしばドイツのすぐれた社会保障給付システムにあると言われている。現在、ドイツの給付システムの利用者の中には、この恩恵を計算に入れて入国してきた者も少なくない。その人々のほとんどはドイツにおいて全く社会保険料を支払っていなかった者であり、しかもある者によっては若い年齢にもかかわらず相当長い間社会扶助(Sozialhilfe)の受給者となっている。