
ある海難防止を考える会合で「5万トンの大型船を操船中にウインドサーフィンと衝突の虞が発生した。本船の乗り揚げを覚悟してでも避
航すべきかと覚悟した事がある」との発言があった。過去この程度の大型船が関門で乗り上げた時、そのサルベージ料は約7、000万円だ
と仄聞した事がある。もちろん人命を金銭では評価出来ない。海上衝突予防法では巨大船でもどんなに小さなプレジャーボートでも区別しな
いで同等に扱われる。性能の違う大型船を操船する人達の悩みには全国的に共通するものがある。海難防止に関する航行安全対策委員会で問
題になるのもプレジャーボート対策である。パンフレットなどを配布して事故防止を呼びかけるにしても、多くのプレジャーボートは組織が
無いので人海戦術による個人的配布に頼るしかないのである。プロの漁船や小型船が漁業組合・小型船組合などでがっちりした組織の傘下にあ
るのと対照的である。目下の所、レジャー用海域を大型船の航行海域から離すより効果的な方法はなさそうである。
海難は海の恐ろしさを充分知らずに、少しばかりの経験で知り尽くしたと誤って認識した時に起こり易い。テレビ報道番組の中で老練の漁
師がその怖さを強調していたのが印象的であった。長年の馴れから居眠りによる海難も珍しくない。音戸瀬戸は航路が狭く民家が両岸に林立
しているため夜は車のライトが眼に入ることがある。航行安全に関する委員会の席上、船長歴だけでも20年に及ぶベテラン旅客船船長から「音
戸瀬戸を航行中、交通信号の青赤を船の舷灯かと思い驚くことがある」との発言があった。船長にこれだけの緊張感があればこそ、多くの旅
客の安全が保たれているのである。船橋にあっては鷹のような鋭い眼付き前方を見つめ、委員会にあっては船の安全に関する少しの妥協も許
さない姿勢に大いなる敬意を表し、海上の安全を心より願うものである。 (嶋田和治)
ご存じですか、海の男の常識
「海に冒する法律、航路標識法の話」
ご存じのとおり「航路標識」とは、灯光、形象、彩色、音響、電波等の手段により、港湾、海峡その他沿岸水域を航行する船舶の指標とな
る灯台、灯標、浮標、無線方位信号所等のことですが、海上という非限界的な場所を航行する国内外の大小船舶の航行の安全を図るための施
設ですから、その公益性は高く塗色、光り方などのキャラクター(性質)は国際的に統一されており、また航路標識が新たに設置されたとき
又は現状に変更があったときなどには、直ちにその旨を告示することとしています。
このように、航路標識は国家的且つ国際的に非常に重要であり、明治時代から「航路標識条例(明治二十一年勅令第六十七号)」によって航
路標識の設置や違反行為などが定められていました。しかし、戦後、法制面から航路標識条例が形式的にも内容的にも現情勢に適応しないた
め、昭和二十四年に航路標識の定義やその目的などを定めた「航路標識法(昭和二十四年)法律第九十九号」が制定されました。
難しいことはさておき、小型船舶の運航者が知っていて損のない条文を抜粋して以下述べてみましよう。
第一条(法律の目的及び用語の定義)
この法律は、航路標識を整備し、その合理的且つ能率的な運営を図ることによって船舶交通の安全を確保し、あわせて船舶の運航能率の増
進を図ることを目的とする。(以下略)
第六条(航路標識の告示)
海上保安庁長官は、航路標識が新たに設置されたとき、又は航路標識の廃止、位置の変更その他その現状に変更があったときは、直ちに、
その旨を告示しなければならない。(告示は官報で行いその他に、無線航行警報などで一般に周知されます。)
第七条(事故発見者の報告義務)
航路標識に事故のあることを発見した者は、直ちに、その旨を海上保安庁又はもよりの管区海上保安本部若しくはその事務所に通報しなけ
ればならない。
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