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中学校女子バレーボール部の部活動における運動量が体力に与える影響


 論  議
 本研究の1,2年群および3年群の体力測定結果の平均値を日本人の体力標準値8)の13歳および15歳とそれぞれ比較すると,1,2年群では脚伸展力とVo2maxで,3年群ではVo2maxで本研究の値のほうが有意に小さかった(それぞれp<0.01,p<0.001およびp<0.01).それ以外の項目では有意差は認められなかった.
 1,2年生の場合,実質的に運動しているのは練習前半の1時間足らずであり(図1),また1年生はバレーボール部に所属してから3ヵ月ほどしか経過していなかったため,測定した時点ではまだ部活動のトレーニング効果が現れていなかったと考えることができる.しかし,3年生については,1日約3時間(授業期間中は約1時間),週に4日の練習を2年間以上続けてきていたにもかかわらず,体力的には特に優れているということはみられなかった.
 吉田たち11)は中学・高校生の女子バレーボール部員の体力を同年齢の標準値と比較し,1日に200kcal,週4日程度の運動量では体力全般を向上させるほどの刺激とはならないことを示唆しており,本研究の結果についても同様のことが考えられる.運動量が多い,東京都でベスト8に入る高校のバレーボール部を調査した結果によると,体力的には同年齢の標準値よりも優れていた12,13).
 ただし,星川たち5)は,運動部生徒は非運動部生徒よりも中学1年の時点で体力水準が高く,両者の差は2年,3年と変わらなかったことを報告していることから,競技力がそれほど高くない水準の中学校における部活動では,成長ホルモンの作用を上回るような刺激9)を身体に与えられなかったと推察される.発育期では,トレーニングを行っても体力的には向上がみられないという報告1-3)は多くあり,むしろこの方が普通なのかもしれない.トレーニングの強度を高くし,量を多くすれば目にみえる効果が得られる可能性があるが,スポーツ障害の起こる危険性が増えるので得策ではない.
 本研究で得られた部活動中のエネルギー消費量および運動強度をこれまでに報告された値5,6,7,10,13)と比較すると,本研究の1,2年群のエネルギー消費量が特に低かった以外は,ほぼ同様の値であった.これは,測定を大会間近の時期に行ったため,試合に出場する3年生を中心としたゲーム形式の練習が主であったことによると考えられる.1,2年群の中には試合に出場する者はおらず,3年生がゲームを行っているときは,1,2年生は座位で見学したため(図1),このような結果となったと考えられる.
 部員数や練習場所の問題はあるが,生徒が身体を動かす機会をできるだけ多く持つことができるような配慮が必要と思われる.前述のように,本研究程度の運動の強度および量では,体力を大きく改善することは期待できないが,健康面で何らかの改善を期待してもよいであろう.LDLコレステロールの上昇やHDLコレステロールの低下は年々憎悪の一途をたどっている4)ということからも,定期的な運動が中学生の健康面にどのように関わっているか,ということについて検討することが今後の課題である.
 練習中の運動強度と体力の関係をみると(表4),%Vo2maxの平均値が高い者ほど背筋力と脚筋力が強く,PWC170が優れており,心拍数の最高値が大きい者ほど垂直跳の成績が良く,PWC170が低いという関係がみられた.しかし,これらのことは発育の状況とも密接に関連していると考えられるので,発育の影響を除外して(ここでは体重の影響を除いて)運動強度と体力の関係をみた(表5).すると,有意な相関がみられたのは,心拍数平均値と皮下脂肪厚,心拍数最高値と垂直跳およびPWC170の3つとなった.
 同様に練習中のエネルギー消費量と体力の関係をみると(表4),皮下脂肪厚,握力,背筋力,脚伸展力およびPWC170との間に有意な相関がみられた.しかし,体重の影響を除いて偏相関を求めたところ(表5),有意な相関がみられた項目はなかった.
 これらのことから,一見するとよく動いている者の方が体力水準が高くみえても,その裏には発育・発達の程度が大きく関与していることがわかる.したがって,本研究被検者の体力水準の高低は,行っている運動の強度や量よりも発育・発達の度合いにより大きく依存していたと考えられる.
 以上をまとめると,1回の練習時間が1〜3時間で,週に4日程度の中学女子バレーボール部の部活動は,体力水準を有意に向上させるほどの運動刺激とはなっていないことが示唆された.これは,中学生女子の体力水準は,トレーニングよりも個人々々の発育・発達の状況に依存している部分が大きいためであると推察される.


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