まとめ
高齢者の立位姿勢保持能およびその低下防止策を論ずる一助にしたいと考え、60〜90歳の高齢者171名(男性31名、女性140名)
を対象として、平衡機能と歩行能との関連を検討した。
その結果、1)対象者の平衡性指標(重心動揺距離、片足立ち、A-P%)および歩行能(歩行速度、歩幅)には明らかな加齢変化が認め
られ、2)歩行速度と歩幅は、動的な平衡機能(片足立ち、A-P%)と有意な相関を示した。また、3)歩行速度、歩幅を目的変数にした重
回帰式において、垂直とびは、男性では唯一有意な説明変数として、女性では最初の説明変数として取り込まれ、その寄与率は最
速歩行が自由歩行より高かった。
以上の結果から、高齢者における歩行能と平衡性指標との関連には筋力の関与が考えられる。高齢者での力強い歩行の保持に
は、筋力低下をできる限り少なくすることが重要で、これはバランス能にも良い影響を及ぼすことを示唆している。
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