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3)航海天文

   古くからフェニキア、ギリシア、ローマ、エジプトの船は、地中海沿岸から沖へ、大西洋へと航路をのばしていきました。見渡す限り海であり、洋上からは道しるべとなる陸地を見ることはできず、頼りにしていた沿岸航法は使えなくなってしまいました。

   ただ、洋上でも見ることのできるものがあります。それは太陽と月と星で、これらの天体の運行を知っていれば、船位(船の居場所)測定に役立てることができます。これを天文航法といいます。

   正確なこの航法が可能になったのは18世紀になってからですが、古代のフェニキア人が約3000年前に大洋に乗り出し、エーゲ海から遠く大西洋のアゾレス諸島や、イギリスの南端シリー諸島まで赴いて交易を行っていたことから、これらの航海には天体が利用されていたことが想像されます。

 例えば、北極星という恒星は地球の地軸から1度離れていますが、地球から見れば常に北にあるといって良いもので、1度程度のばらつきは古代においては問題にするほどの値ではなく、誤差範囲内でした。北半球にあって北極に近づけば、北極星が見える角度はだんだん高くなり、赤道に近づけば同様に低く見えます。

 図でも分かるように、北半球のある地点Pでは北極星を見上げる角度αが地球の緯度αと同じ値を示します。

 

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