また,何度も繰り返して測るときには,3分ぐらいの間をおくようにするほうがよいといわれているが,これは繰り返し測定している間に前腕の血管容積が次第に増大して,K音が聴きとりにくくなるためである。しかし上述の上肢挙上法を用いれば続けて測定してもなんら問題はない。
E 自動血圧測定法
1.自動血圧測定法の必要性
現在でもほとんどの医師は水銀血圧計,あるいはアネロイド血圧計を用いて診察室での測定を行っているが,このような血圧測定法を一般のひとびとに広めようとする試みが30年前より進められ,そのことによって二つの大きな変化が現れた。一つはそのことによって一般のひとびとが血圧に対して強い関心を示すようになったことと,もうひとつは医師の患者に対する態度が,これまでの一方向的なあり方から,患者より情報の提供を受けるといった,より柔軟な姿勢に変わってきたことである。しかし,実際には医用電子機器の著しい発達に伴って,より簡便に自動測定ができるようになって,今日ではほとんどの自己測定が全自動の血圧計で行われるようになっている。
およそ20年前にわれわれが行った調査でも,聴診法で測定の指導を受けた者の中から,2〜3年の経過で自動血圧計の使用へ移行する傾向がみられており,このことはごく自然ななりゆきと考えられる。聴診法を用いた自己測定では,ポンプによる加圧に伴う手の労作,目盛りの読みとり,減圧のための指によるネジ操作,K音の聴きとりといった一連の動作を短い時間で同時に行うことは,とくに高齢者でなんらかの感覚障害を有し,指先のこまかい仕事を行いにくくなっているものにとっては,自己測定自体がストレスになりうることからも適切な方法であるとはいえない。
そのほかにも学校や会社などでの集団健診において,決められた時間内で多くの対象者に血圧の測定を行うということは,測定者にとっても心身的に大きな負担であり,測定ミスを誘う原因にもなりうることから,データの解析も含めた自動測定機器がこのような場面で用いられることが多くなっている。