従来,血圧測定に先立って少なくとも10分以上の安静が必要とされているが,安静臥位の状態で連続して2分ごとに30分間自動血圧計によって血圧を測定すると,図42に示すように前半の10分の血圧値は中半と後半のそれぞれ10分の値と比べて有意に高い値を示すことがわかる。後二者の値には有意差がないことから,安静臥位20分における後半10分の値はそのひとの血圧値を表す一つの指標と考えることができる。この血圧値の位置づけを明らかにするため,24時間の血圧値と20分血圧測定の後半10分の血圧値とを比較してみると,表1に示すように安静時後期の血圧(L)は午前7時から就寝時までの血圧,あるいは24時間の平均血圧に近い値を示し,また,それぞれの時間区分での血圧値との相関をみると収縮期圧,拡張期圧ともいずれの時間区分の値とも有意な相関を示すが,なかでも睡眠中と24時間の平均値とにきわめて高い相関が認められた(表2)ことから,24時間測定値に代わる有用な血圧値として20分間安静時の測定値が臨床的に有用な指標として用いうる可能性が示されたといえる。
この20分安静後の血圧値は,心エコー図で計測された左室心筋重量とよい相関があることから,20分の安静によって拡張期圧が90?Hg以下になるような患者は,境界型高血圧症としてまず生活習慣の変容により治療を開始するといった治療方針をたてることもできる。