図23毛細管領域における物質交換の機序
本態性低血圧の多くのひとびとは,この部位の静脈の緊張が悪いためにここに血液貯留をきたすことが起立性めまいを生ずることになる。
従って,腹帯をするということは,機械的にこの静脈貯留槽を外部から圧迫して,溜まっている血液を心臓へ戻してやることになる。また,この部分には交感神経の支配が多く,起立時の反射調節にも重要な役割をもっている。すなわち,起立によって血液は筋肉静脈や内臓静脈に貯えられて静脈還流が減少することが心拍出量を低下させ,血圧の下降を生じるが,このさい,先に述べた調圧反射によって内臓静脈が緊張することと,一部は起立による下肢筋の緊張が筋肉静脈を圧迫して,筋ポンプの効果で静脈還流を増し,心拍出量を保つことができる。その他,皮膚の静脈は情動の変化や,運動時の体温調節に重要な役割をもつ。
このように,循環系の調節では静脈系の関与が大きいことが理解されたと思われるが,とくに最近では,高血圧の発症についても,静脈系の役割が注目されている。すなわち,将来,高血圧になるような個体では,幼若の時期にすでに血圧がやや高く,脈が速いとか,心拍出量が多いなど,交感神経の活動状態が亢進していることが知られており,このさい,静脈系の緊張の亢進が,静脈還流を増し,高血圧の発症を助長することが推測されている。
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