ダイナミックなシステムづくりを
さて,今後の展望についてですが,私が懸念しているのは,これからボランティアは増えるのだろうかということです。聖ヨハネホスピスでは,3年前に緩和ケア病棟を新築したときには200名もの方がボランティアを希望されました。年月の経過とともにその数は減ってきています。やはり社会の情勢ということも考えなければいけないと思います。残念ながら,社会の状況はゆとりのある方向へはいっていないようです。これまでボランティアの主力を担っていた主婦が仕事をもつようになって時間がとれなくなってきているのでしょうか。そういう意味では,短い時間で入れ替わり立ち替わり来てくれるボランティアが増えてくるのではないかと予想されます。多くの人が一つのことにかかわるためには,それをきちんと支えていくためのシステムを作っていくことがたいせつになると思います。しかし,ボランティアはなかなかこのシステムの枠の中に組み込まれにくいダイナミックさをもった存在です。このダイナミックさを失わないで,しかも多くの人が関われるシステムというものをこれから模索していかなければならないと考えています。一つのシステムを作ったときにどれだけそのシステムを柔軟に度量広く適用していくかがポイントになってくると思いますが,この点はなかなか微妙です。今後の課題としていかなければなりません。
第2に,日本も在宅ホスピスの存在がいわれるようになってきました。もちろん施設型のホスピスもできてくるでしょうが,同時に在宅型のホスピスも発展してくるだろうと思います。こうなったときにボランティアがどういう形で関わっていくのかがたいせつなポイントになってくると思います。そうなるといまの状況では十分ではないような気がします。これは現在ボランティアをしている人にとっても課題になっていくと思います。
最後に,かねてから感じていたことですが,ホスピスボランティアには横のつながりがありません。ホスピスについては連絡協議会ができました。単独でやっていくと限界が見えてきますので,いろいろな方が集まって知恵を出し合いながら,全体の質を向上させていくことがこれからは重要になっていくのではないかと感じています。本日の講座を契機にして,ぜひボランティア同士の横のつながりを実現させたいと思います。
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