ところが日本は高校卒業後すぐ医学部に入るのですから,医者としての適性があるかないかはよくわからないのです。これは看護婦にも同じことがいえるわけです。聖路加看護大学では,高校を出てストレートに入学してくる学生のほかに,4年制の大学でたとえば心理学を専攻した,あるいは音楽をやったとか,文学を学んだ人が,やはりナースになりたいといって学士入学してくるのを歓迎していますが,それらの人たちを見ると,高校を出たばかりの人とは全然違うところが見受けられます。勉強しようという自発的な意欲が強い。それは動機づけられているからです。ですから,医療に従事するような専門職というものは,こういった強い動機と感性がなければ不適であるということを,私は特に協調したいのです。
ボランティアの条件
ボランティアとしてホスピスや緩和ケア病棟で働きたい,あるいは在宅の患者さんを訪問したいというような人がおられると思いますが,ボランティアになるには三つの条件がたいせつであるということを言っておきたいと思います。
一つは,主体性です。本当に動機づけがあっての行動であるのか,ただ人がやるから自分もやるということなのか。
第2は,自分の価値観をもっているかどうかです。生きる意義とは何か,そして,死んでいく患者さんの人生観や価値観,つまりその方の哲学をどの程度理解することができるかです。宗教的なことになると,自分は仏教だけれども,患者さんはキリスト教である,あるいは自分はクリスチャンであるけれども,患者さんは仏教であるといった場合に,その相手の価値観や宗教をたいせつにしながらも,自分の中にも自分なりの価値観をもっていないと,ボランティアとしての働きを十分にすることはできません。
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