病院の一部の病棟に緩和ケア病棟という名称がついているのは,そこでは痛み,苦しみ,不眠,不安といったものを軽くする,緩和することができるところであって,それが独立した施設となって,いわゆる急性期の病気を扱う他の病棟とは異なる医療を提供するところとしてホスピスという名前で呼んでいるのです。
だんだん悪くなっていく病気の苦しみを少なくする,緩和するというのはどんな病院でも一般にやられていることなのですが,何分にも病院は忙しすぎる,手が足りない。看護婦さんは忙しく働いているし,お医者さんも忙しすぎて,その患者さんのそばに座ってゆっくり心の声を聞いてあげるだけの余裕がない。痛み止めの注射はするのですが,それは薬物的に痛みを止めるだけで,心を支えるための時間的な余裕がもてないのです。ですから,いよいよ死期が近づいた人には,看護婦さん,医師,あるいはボランティア,ソーシャルワーカー,そして何よりもその人と一緒にその人生の最後を共にしたいと病人が願うその人たちが傍らにいてくれる,共にそこにいる,いつもそこに誰か心の支えとなる人がいるというのがホスピスの特徴でもあります。病院で死んでいくすべての患者さんにもこういうことをしなくてはならないのですが,それがなかなかできないのが現実です。
変わってきた医療提供のシステム
私はつい最近アメリカに行って驚いたことは,医療費や人件費の高騰で病院の経済状態が悪化し,看護婦の数を少なくしなければならない,お医者さんの数も少なくしなければならないという厳しい現実でした。
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