V.ケア提供者のストレスとその対処のしかた
ストレスとは
最後に,ケアを提供する人のストレスについてお話ししましょう。ストレスというのは一人一人が,これがストレスだというものがストレスです。これは患者さんが痛いというのが痛みだというのと同じことです。ということで,自分たちのことについて少し時間をかけて話してみたいと思います。
なぜみなさんが緩和ケアに携わるようになったのか,あるいはがん患者の医療に携わるようになったのでしょうか。こんな仕事を続けようと思うのは私たちはひねくれものなのでしょうか。何か人のためになることをしたい,よいことをしたいということだけでもないと思います。
若い同僚の医師で,最初は新生児の医療をしていたのですが,小さい赤ちゃんにカニューレを入れたりすることがストレスになって,緩和ケアに入ることにしたという人がいます。彼は赤ちゃんに2時間に1回ずつ採血をしなければならない状況がストレスになったというのです。しかし,セント・クリストファーズ・ホスピスで仕事をしている限り,夜中に2時間ごとに起こされるということはないのです。
私は内科や外科のナーシングはあまり好きではないので,緩和ケアの仕事をすることにしました。それからたまたまセント・クリストファーズ・ホスピスの近くに住んでいたということもあります。
振り返ってみますと,私は緩和ケアで働き始めた頃よりも,いまのほうがストレスを感じるようになった気もしています。
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