社団法人日本ナショナル・トラスト協会は平成10年10月16、17日の両日、滋賀津市の滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで『環境とナショナル・トラスト講座1998』を開催しました。この講義録は2日間にわたる11人の講師による講義の全記録と聴講者のメモを収録したものです。
講師の先生方には、ご多忙中にもかかわりませず、私どもの申し出ご快諾をいただき、遠路はるばるお越しくださいまして、ご専門の環境問題について広い視野から含蓄のあるご講話をしてくださいました。主催者を代表しまして心から御礼を申し上げます。
当日は台風10号の接近で強い風雨にもかかわらず、新築・開館されたばかりの琵琶湖畔のすばらしいホールに、延べ約600人の聴講者が参集、熱心に受講されました。
本協会は全国各地で展開されているナショナル・トラスト運動の連絡・協力組織として「ナショナル・トラストを進める全国の会」を継承し、平成4年に社団法人として発足しました。その5周年事業として平成10年1月に「21世紀につたえたい環境」のタイトルで第1回の『環境とナショナル・トラスト講座』を東京・築地の朝日ホールで開催しました。今回の講座はこれに続くもので、関西地区で初めて行ったものであります。
貴重な自然や歴史的環境を住民の寄付金や寄贈によって、あるいは保存契約を結んで保護、管理、公開するナショナル・トラスト運動は100余年前に英国ではじまりましたが、その後、20世紀後半になって各国に広がり、今や30数カ国でそれぞれ独自の運動を展開しております。わが国でも40数カ所で、住民の自発性を基盤にして、さまざまな形の活動かダイナミックに進められ、環境問題の解決をめざす住民運動と自治体活動のひとつの典型を創りだしつつあります。
21世紀をめざしてこれらの運動が、さらに発展してゆくためには、広範な人々か、地域の環境を見つめるまなざしをさらに鋭くするとともに、地球的規模の環境に対し幅広い視野を身につけることが求められています。このような視点から、それぞれにご専門の立場から現代の環境問題に正面から取り組んでおられる講師の方々にご教示を仰ぐことにしたのです。