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■事業の内容

「海上における捜索及び救助に関する国際条約」(SAR条約)の発効、「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約」(OPRC条約)の発効等に見られるように、海上における人命及び財産の保護並びに海洋環境の保全に関する国際的な枠組み作りが活発になってきている。特に平成6年11月、「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)の発効により、世界的に新たな海洋秩序体制が構築されようとしている。こうした国際的な枠組みの実効を挙げるためには、海上保安分野における関係諸国との協力・協調体制の一層の強化が必要である。
 ヨーロッパを中心とする先進国については、新たな海洋秩序体制構築の動きを受けて、新しい海上保安組織が整備される等、それぞれの国内における海上保安体制の充実・強化が図られている。こうした先進諸国の海上保安体制を調査することは、相互の協力・協調体制を強化するためにも非常に重要である。
 以上の状況に鑑み、先進諸国を対象とした現地調査及び関係資料の収集等を実施するとともに、わが国の海上保安業務を広く海外に周知することにより、国際的な海上保安業務の推進を図り、以て公益に資することを目的として以下の諸事業を実施した。
 [1] 海上保安に関する国内外の情報提供
  [1] 規 格  B−5版 60頁×2回
  [2] 部 数  各500部
  [3] 内 容  内外の海上保安業務関係資料及び情報
  [4] 配布先  海上保安庁及びその出先機関並びに内外の関係者
 [2] 先進諸国海上保安体制調査
  [1] 調査対象国及び日程
   a.イギリス     平成9年11月3日〜11月5日
   b.アイルランド   平成9年11月5日〜11月9日
   c.スペイン     平成9年11月9日〜11月14日
  [2] 調査内容   海上保安体制特に海洋環境保護及び汚染防除体制、その他海難救助、航行安全、水路、航路標識業務等
  [3] 訪問先  
   a.イギリス     トリニティーハウス、英国海軍水路部
   b.アイルランド   海洋緊急業務部、海洋省、航路標識公社
   c.スペイン     海上救難安全庁、内務省治安警察局海上業務本部
              海上救難安全庁バルセロナセンター
  [4] 調査員    財海上保安協会 常務理事 下江  旭
  [5] 調査報告書  A−4判 80頁 200部
  [6] 配布先    海上保安庁及びその出先機関並びに内外の関係者

 [3] 英文海上保安法令集の作成
  [1] 規 格  A−5判 100頁
  [2] 部 数  200部
  [3] 内 容  海上保安法令の中から国際的に周知すべき内容を英訳したもの
  [4] 配布先  海上保安庁、その出先機関、大使館等在日外国機関を含む内外の関係者、及び在外の関係機関
■事業の成果

[1] 海上保安に関する国内外の情報提供
   最近における我が国の海上保安業務の国際化に対応し、円滑な業務の推進を図るため、内外の海上保安関係資料及び情報を取りまとめた定期刊行物を年2回作成し海上保安庁の第一線で国際的事案の処理に当たっている巡視船艇を含めた全部署及びその他の関係者に配布した。このことは、国際的な情報誌として、現下の海上保安業務の遂行に大きく寄与するものと思料される。
 [2] 先進諸国海上保安体制調査
   最近における我が国の海上保安業務は急激に国際化しつつあるが、特に平成8年7月20日、国連海洋法条約へのわが国の加入が効力を生じ、海洋管轄権が飛躍的に拡大した新しい海洋秩序体制に現実に対応することとなった。SAR体制の推進、全世界的な海洋環境保護対策等と併せ、こうした国際的な枠組みを実効あるものとするためには、海上保安分野における先進諸国との協力・協調体制の一層の強化が必要である。
   本事業においては、これらの現状をふまえ、海上保安庁の指導のもとにアイルランド及びスペインに調査員を派遣し、両国の海上保安関係機関の組織、体制、業務の実施状況等の現地調査を行うとともに、関係者と直接に情報を交換したほか、貴重な資料を入手した。
   なおアイルランドにおける海上保安業務の一部はイギリスが所管していることから、同国訪問に先立ちイギリスの関係機関を訪問し、貴重な情報を入手した。
   これらの調査結果は、報告書として取りまとめるとともに、本事業で実施している定期刊行物(コンパス33号)にも掲載し、海上保安機関その他関係者に配布し周知した。これらは、今後の国際協力の推進に大きく寄与するものと思料される。
 [3] 英文海上保安法令集の作成
   海上保安業務は、それ自体が国際的であり、したがって海上保安に関係する法令はすべて国際的であるといっても過言ではない。わが国の港湾に出入港し、周辺海域を航行する外国船舶の数はますます増えており、これらの船舶による海難やこれらに起因する重大かつ深刻な海洋汚染事故も後を絶たないところである。こうした事故は未然に防ぐことが最も大切である。この法令集は、外国船にわが国周辺海域での安全航行のための法令を周知するための貴重な資料となるものであり、今後の事故を防ぐための有力な手段となると同時に周辺海域の海洋環境の保護に大いに役立つものと確信する。さらに現場で外国船等に接触する海上保安官が多様な業務を遂行するための強力な参考文献となることを期待している。





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