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■事業の内容

わが国造船業は、世界市場での生き残りをかけて、コスト競争力の強化、次世代船舶メガフロート等の研究開発や造船CIM、CALS等情報の高度活用による効果的な生産システムの開発等事業革新に取り組んでいる。
 一方、造船協力業は、造船業にとって現場の第一線を支える技能集団として将来とも不可欠な存在であり、造船業が健全な発展を遂げるうえで熟練技能を身につけた人材を安定的に供給することのできる協力企業の存在と育成が不可欠である。
 元請企業が高度情報化をめざして大きな事業変革と遂げようとしている現在、協力業界としても、元請の事業環境やニーズの変化、社会的なニーズの変化に即応していくための情報化対応が不可避となってくるが、企業規模が小さく、また受注価格の大幅低下に伴う採算悪化・赤字受注増加に加えて、労働力の不足・高齢化問題等で苦しむ当業界企業にとって個別企業ごとに取り組むには非効率であり業界全体としての情報活用への取り組み、環境整備が必要である。
 本事業は、会員や企業が求める経営・技術等に関する情報を業界ベースで収集・提供するとともに、企業の保有している人材、設備、熟練された技能・ノウハウ等の各種経営資源を、業界ベースで集約し活用することを通じて、企業の経営の効率化、事業の活性化を支援することを目的に、企業の求めている情報ニーズ、情報の収集・蓄積・加工提供の方法や、また、より効果的な情報活用に繋げる手段として情報ネットワークの形成の要件、システムの規模、資金コスト等について調査・検討を行い、システムの基本構想案を策定した。
 [1] 情報の収集・活用システム及び情報ネットワーク化の調査・検討
  [1] アンケート調査
    造船協力業の情報化への対応の実態とニーズ調査を主な内容とするアンケート調査を、会員所属企業対象に実施し解析を行った。
   a.調査表の作成・配布
    a 規 格:A4版 2頁
    b 部 数:2,000枚
    c 配布先:会員所属の1,900事業所
    d 内 容:従業員数、売上、設備投資等の動向、情報化への対応の実態、労働力に関する情報ニーズ調査等
  [2] 委託調査
    会員及び会員所属企業に対する情報提供と業界の情報ネットワーク化に関し、システムの適正規模、コスト負担、効果、情報ニーズ等について、専門家の協力を得て調査・検討を行った。
   a.名 称:「情報の収集・提供システム及び情報ネットワーク化に関する調査研究」
    a 調査内容及び調査方法
     イ.情報ニーズ分析等(資料調査、ヒアリング)
     ロ.先進事例研究(資料調査、企業訪問ヒアリング)
     ハ.利用者意向の調査(企業訪問ヒアリング)
     ニ.情報収集・活用ツールの比較検討(資料調査)
     ホ.システム構築に関する指針の策定及び報告書作成(総合分析と討議)
  [3] 報告書の作成
    アンケート調査集計結果と、情報の収集・提供システム及び情報ネットワーク化に関する委託調査の結果を委員会に報告・審議のうえ報告書を作成した。
   a.名   称:造船協力業の情報の活用及びネットワーク化に関する調査研究報告書
   b.体裁・部数:A4版 104頁 2,000部
   c.配布先  :会員、会員所属企業、関係官庁、関係団体等
   d.内   容:a 調査の概要
           b 情報活用システムの基本構想に関する調査・検討
           c アンケート調査集計結果
■事業の成果

わが国産業経済全般の構造調整が進む中、造船業においても自由な競争を阻害する様々な規制が撤廃され、国内のみならず国際的規模での企業間競争が激化している。造船元請各社は熾烈な競争社会での生き残りをかけて、事業の再編・合理化・コストの圧縮を進める一方、CIM、CALS等、情報を高度に活用した効率的な生産システムの構築に取り組んでいる。

 元請企業の高度情報化が進めば、協力業界に対する元請のニーズが変化していくことは必定であり、こうした事業環境の変化に即応し情報の戦略活用を進めるための業界レベルでの対応が不可避となっている。また、進行する高齢化や慢性的な労働力不足など深刻な経営課題に対する取り組みも焦眉の課題である。

 本事業は、こうした課題に幅広く対処するものとして、業界ベースでの情報の収集及びネットワークを通じた情報提供事業を想定し、業界で求められる情報ニーズ、先進事例、提供方法やツールなどを吟味し、当業界に相応しい情報活用のあり方について基本構想を示すべく実施したのである。1年間の調査検討を通じて、当業界が情報活用システムを導入・運用するにあたってのシステム化の目標・対象範囲・具備すべき基本機能をはじめ、システムの設計・構築を行う上での必要な作業内容やプロセスが明確化されるとともに、予測される効果、システム構築・運用上解決しなければならない各種問題点などを把握することができたことにより、情報の戦略活用による業界基盤強化へ向けての体制づくりが進んだ。





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