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■事業の内容

アジア太平洋造船専門家会議は、アジア太平洋地域閣僚会議の海洋協力計画の一環として1971年に開催されたアジア太平洋海洋協力計画専門家会議を前身とし、造船の諸分野に関して、アジア太平洋地域の各国政府の専門家の間で自由かつ率直な意見・情報の交換を行うことにより、この分野における地域協力を円滑に推進するとともに、参加各国の造船業及び舶用工業の発展に寄与することを目的に、1973年の第1回会議以来、各国の持ち回りで開催(日本では隔年開催)されている。
 国際的な単一市場を分けあっている世界の造船業にとって、その調和ある発展を図るためには国際的な協調が不可欠であり、わが国造船業及び舶用工業が今後とも秩序ある発展を遂げていくためには近隣のアジア太平洋地域の各国を相互訪問しつつ、実態を見聞きしながら造船及び舶用工業全般について諸問題を協議するとともに、意見交換等を通じて相互理解や技術協力の推進等を図ることが極めて重要である。
 このため、本年度はわが国造船業及び舶用工業界が中心となって、近隣のアジア太平洋諸国の造船専門家をわが国に招き、各国の造船業及び舶用工業の現状と見通し、タンカーの油流出事故等による海洋汚染防止のためのタンカー構造基準の見直し、及び当該地域におけるポート・ステート・コントロールの強化、航行の安全のみならず環境保全にも重大な脅威を与えている老朽船やサブスタンダード船の解撤促進等の諸問題を協議するとともに、わが国造船所等を視察し、わが国及び関係諸国の造船業及び舶用工業の発展に資することを目的として、次のとおり事業を実施した。
 [1] 事前調査の実施
  [1] 海外事前調査
    第21回アジア太平洋造船専門家会議の事前調査のため、9月7日から13日までの間インドネシア及びフィリピンに出張し、開催日程及び提出資料・議題並びにスタディツアー等について協議した。
  [2] 国内事前調査
    11月の本会議のあと実施するスタディツアーの事前調査のため、三和ドック、サノヤス・ヒシノ明昌(水島製作所)、ナカシマプロペラ等に出張し、見学所要時間、見学コース等について円滑に進められるよう事前調査を行った。
 [2] 会議資料の作成
   本会議に使用する日本側の提出資料(英文・日本文)を作成した。
 [3] 会議開催
  [1] 本会議
   a.
    a 日 時  11月10日
    b 場 所  赤坂東急ホテル会議室「金の間」
    c 内 容  造船業並びに舶用工業の現状・施策、船舶解撤の現状・施策について
   b.
    a 日 時  11月11日
    b 場 所  赤坂東急ホテル会議室「金の間」
    c 内 容  メガフロートの技術開発及びOECDの活動状況、造船協定の動向について
  [2] スタディツアー
    11月12日 (株)三和ドック視察
    11月13日 (株)サノヤス・ヒシノ明昌水島製作所及びナカシマプロペラ(株)視察
    11月14日 岡山後楽園等見学
  [3] 参加国等
   a.参加国数  12カ国(オーストラリア、中国、フィジー、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、米国、ベトナム、日本)
   b.出席者数  88名
    ※ なお、スタディツアーには12カ国・65名が参加した。
  [4] 報告書作成
    会議の議事概要並びに参加国から提出された各国の造船業の現状等について翻訳し、報告書にまとめ配布した。
  [1] 規 格  オフセット印刷 約130頁
  [2] 部 数  100部
  [3] 配布先
    会員会社   60部
    運輸省     5部
    海外事務所等 31部
      シンガポールジェトロ共同事務所 10部
      パリジェトロ共同事務所      5部
      ニューヨークジェトロ共同事務所  5部
      シドニージェトロ共同事務所    5部
      バンコックジャイカ事務所     5部
      マニラジャイカ事務所       1部
    事務局在庫   4部
■事業の成果

第21回のアジア太平洋造船専門家会議が、わが国で開催されたことにより中国、インドを始めとする第3造船勢力の目ざましい造船分野への進出、意欲の高まりを感じることができ、また造船業及び舶用工業全般についての諸問題を協議し、特に解撤問題等については参加各国と更なる相互理解を深めることができた。セミナーでは、わが国で技術開発が進められているメガフロートの講演並びにOECD事務局ヒューブナー氏を招き造船協定の動向に関する講演により、アジア各国に対し日本造船業の国際協力推進への取り組みについても更に理解を深めることができるなど、極めて重要且つ有意義な会議となった。

 一方、スタディツアーでは広島地区の当会会員造船所等を視察することによりわが国造船業・舶用工業の技術の優秀性について更に認識を高めることができ、意欲だけでは造船業の構築は無理であるとの現状をしらしめ今後、民間ベースでも生産性の向上等に関する技術交流等が促進されるものと予想される。

 今後も本会議を継続開催することを各国代表者も強く望んでおり、これにより造船業並びに舶用工業分野の一層の国際協調を円滑に推進し、わが国並びに各国の発展に大いに寄与するものと確信する。
 





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