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■事業の内容

本事業は最先端の技術開発である海洋の開発に係る総合的試験研究を実施するため、海外の海洋開発先進国の研究機関との連携を図り、技術情報を入手し、当センターの研究開発事業に資するとともに、わが国の海洋科学技術の進展に寄与する事を目的とし、次のとおり実施した。
 [1] 海洋開発関連の国際会議・展示会への出席
  ・平成9年5月4日(日)〜11日(水)にわたりOTC97に参加、Vetco社、Hydril
社を訪問した。
  ・海底石油開発のための技術(探査、掘削、生産、輸送)に関する論文発表。
  ・深海掘削計画(ODP)からの研究報告のセッション及び石油開発動向に関するゼネラルセッション。
  ・石油開発関連機器を中心とした大規模な展示会が行われた。
 [2] 海外の研究者・技術者の招聘
  ・平成10年1月14日〜22日 9日間にわたり、ノルウエー海洋工学研究所(MARINTEC)のEgil Lien、外洋型養殖施設の専門家を招聘。
  ・沖合海域の利用技術及び沿岸生態系研究の進展に関する最新情報の取得と意見交換を行った。
  ・実施場所は海洋科学技術センター及び岩手県大槌町にて行った。
 [3] 国際協力の推進
  ・平成9年12月9日〜18日(木)米国ボストンにあるウッズホール海洋研究所、ボルテイモアにあるメリーランド大学環境研究所を訪問。
  ・シアトルで開催された「太平洋総合イニシアティブ」第2回会合出席等に出席した。
 [4] 国際会議開催実施経過
  [1] 極限環境微生物国際会議
  ・平成10年1月18日から22日まで横浜市西区みなとみらい1丁目のパシフィコ横浜を会議場として実施した。
  ・堀越弘毅海洋科学技術センター深海環境プログラム・グループリーダー及び米国・ウッズホール海洋研究所ヤナシュ博士による特別講演、201件の研究発表(うちポスター発表116件)。
  ・パネルディスカッションを実施した。
  [2] 北極海における陸棚域と深海盆間の諸量の交換過程に関する国際ワークショップ
  ・2月17日から19日まで横浜市港北区の新横浜プリンスホテルを会議場として実施した。
  ・主な発表内容は
   a.北極海陸棚域における力学
     高密度水の形成過程、冷たい塩分躍層の形成・維持機構、渦と不安定、他
   b.生物・地球化学サイクル
     栄養塩の収支と輸送過程、一時生産の律速過程、淡水流入の影響
■事業の成果

[1] 海洋開発関連の国際会議・展示会への出席
  [1] 米国テキサス州ヒューストンで開催されたOTC97において、海底石油探査技術、海底石油掘削技術、海底石油生産技術等に関する論文発表、及び海洋構造物関連、掘削関連の展示会を中心に、当センターの進める科学的深海掘削研究に応用可能な最新技術の動向を把握することができた。
   これらは海洋科学技術センターにて計画中の深海掘削船の運用、及び「21世紀の深海科学掘削計画:OD21(Scientific Ocean Drilling in the 21st Century)」に大きく寄与すると思われる。中でもライザー掘削を行う上での泥水循環システムに関連する機器は注目に値し、環境問題の観点からも重要と評価される。
  [2] OTC97への出席に併せ、深海掘削プログラムの実施の根幹技術であるライザーコネクターのメーカー2社を視察し、これらの海洋機器、資材に関する最新の情報を得ることができた。
 [2] 海外の研究者・技術者の招聘
   岩手県と共同で行っている、潜降浮上型人工海底による海中空間利用拡大技術の研究開発に関し、
平成3年に完成した「マリンあや1号」、平成8年に完成した、外洋型の「おおちゃんマリン1号」
を視察し、この二つの施設をさらに展開するため、構造物設計上の気付き事項、保守管理の考え方、
運用技術などに多くの助言を得た。
 [3] 国際協力の推進
  [1] ウッズホール海洋研究所との今後の研究協力を円滑に行うため、双方の予算の現状、研究管理、
人事管理等に関する情報交換、意見交換を行うとともに、同研究所としてユニークな分析機器であるイオン加速器及びAMS質量分析器等を視察出来た。同様に、ベトフォード研究所、ダルハウジ大学等、在カナダの主な海洋研究所を併せて訪問し、研究内容、組織・施設の現状、今後の研究協力の進め方等について視察・意見交換を行う事が出来た。
  [2] 太平洋総合観測イニシアテイブの会議の席で、米国太平洋海洋環境研究所より海洋科学技術センターとの協力実績、協力基本協定の更新及びTRITON計画に関する紹介がなされた。日本側の議長科学技術庁の尾崎専門官の了承を得て、「みらい」の国際運航体制(案)と長期利用計画(案)につき出張者より説明した。米国側は本運航体制に大変関心を示した。研究プロポーザルの応募方法が決まり次第米側議長にも通知するよう要請された。
 [4] 国際会議開催
  [1] 北極海における陸棚域と深海盆間の諸量の交換過程に関する国際ワークショップ
    北極研究に関わる世界の主要な研究者が一同に会して各々の国家事業として行われている北極海観測計画の進捗状況、今後の実施計画を披露し、より効率的な研究の実施に向けて相互の連携を深める為には、実に良いタイミングで開催され、相互の研究に寄与する事が出来た。
    また、日本で会議を開催し、世界の主要な北極研究者と平素は参画の機会に乏しい日本の若手研究者に場所が与えられたこと、また北極研究では後発で関心が薄いと思われがちだが実際には地球の気候変動、水循環領域を明らかにする観点等から重要と位置付けている海洋科学技術センターの研究活動を強く印象づけて今後の世界的枠組み作りの中で主導的役割を果たす布石とした意義は大きい。
  [2] 極限環境微生物国際会議
   a.今後、ゲノム生物学が次世代生物研究の中心となることが予測されており、現在世界中で極限微生物のゲノム解析が進められ、多大な成果が挙がっていることが、本会議の発表から伺えた。
   b.海洋科学技術センターからはゲノム研究のほか圧力/圧力生理学として、好圧性細菌の遺伝子発現のメカニズムが、いかに圧力因子に制御されているかについて、また、高圧環境が生物にとってどのような生理学的な影響を与えるかを調べ、新たな学問分野として「圧力生理学」の推進を提唱し内外の研究者から賛同が得られた。
   c.パネルディスカッションにおいては、「極限環境微生物の将来」と題し、堀越グループリーダーの進行により、米国、ノルウエー、韓国、日本およびECから著名な研究者および行政官により、有意義な意見交換を行うことができた。その結果、本分野は、宇宙の地球外生命や地球深部の生命など生命の起源や生命機構の解明に不可欠な科学的課題が存在しているにも係わらず多くの課題が残されていること、また、バイオテクノロジーを活用した産業化へも多くの期待があること、更に、海洋の生態系や環境汚染さらには新たな資源などに対する微生物の役割や活用の可能性があることなど、極めて重要であり、期待が高いことが示された。また、極限環境として海底下の超深度における微生物の生存と、この生命機構の解明を進めるための深海掘削船を用いた国際的な研究プロジェクトの意義とこれへの期待が述べられた。





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