日本財団 図書館


■事業の内容

(1) アジア・アフリカ等におけるらい対策研究及び援助
[1] 技術者研修
a.海外技術者研修
(a)フェローシップ(38名)
(b)スカラーシップ(26名)
b.海外専門家技術者研修
(a)バングラデシュ国内セミナー
(b)ベトナム国内セミナー
(c)ブラジル国内セミナー
(d)インドネシア国内セミナー(6,180名)
(e)ネパール国内セミナー(317名)
(f)中国国内セミナー
(g)インド国内セミナー
(h)シンガポール国内セミナー
c.専門家技術者研修(国際医療協力研修)
(a)国際保健協力フィールドワーク・フェローショップ(14名)
d.ハンセン病に関する教材の開発及び供与
(a)教材の制作
・Partner(中国語) 10,000部
・An Atlas of Leprosy  1,000部
・40 years of Pioneering and Development Towards
The Success of Leprosy Elinination in Thailand  1,000部
・CBS(Community Based Rehabilitation)ニュース(中国語版) 10,000部
(b)教材の購入
・ハンセン病医療教材ビデオ(1セット/5回シリーズ)
・TALMilep(ハンセン病教材共同プログラム15件)
[2] 現地技術協力
a.専門家の派遣
(a)対 象 国  ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、インドネシア、ネパール、タイ、中国、ミクロネシア、ベトナム
(b)派遣人員  17名
[3] WHO、ILEP等らい関係諸機関との協議、連絡及び調整
a.WHO、ILEP及び海外救らい団体等との協議、連絡  5回
b.ILEP実行委員会の開催
[4] ハンセン病に関する基礎及び実地研究
a.ハンセン病の化学療法に関する国際共同研究
(a)実施場所 タイ 笹川記念研究施設
(b)研究内容  ・レプロミンとレプロミンを使った皮膚反応診断
         ・PGL−1や35KDaの蛋白を使用したELIZA法による血清診断
         ・らい菌遺伝子を検出するPCR法 等。
b.化学療法共同研究運営委員会の開催
(a)開催場所   タイ
(b)会議内容  ・化学療法共同研究の進行状況報告及び問題点の検討
         ・タイ笹川記念研究施設の今後の運営方針と研究活動の検討
         ・アニマルハウスプロジェクトの検討
(c)参 加 者  タイ側 7名
          日本側 3名
          委 員 2名
[5] 薬品機材供与
a.アジア・アフリカ等に対する薬品・機材供与
(a)対 象 国   ブラジル、インド、中国、ミャンマー、ベトナム、スーダン、エチオピア、フィリピン、ナイジェリア、カンボジア、タイ、バングラデシュ、モザンビーク、ガーナ、パプアニューギニア
(b)供与品目   治らい薬、研修用タイプライター、プロジェクター、研修用OHP、車輌等
[6] ハンセン病に関する広報啓蒙活動
a.ハンセン病制圧に伴う啓蒙活動(国連IDEAマルチメディア展示)
(a)開催場所 国連本部(ニューヨーク)
(b)開催期間 1997年10月30日〜11月19日
(c)目  的 ハンセン病制圧の成果を具体的なイメージで表現する事を通じて、ハンセン病への正確な理解を促し、現在もなお各地に残る差別と偏見を払拭し、回復者が人間としての尊厳を回復し、社会の構成員として生きることの出来る環境を作る。
b.教材の購入及び配布
(a)ハンセン病医学        210冊
(b)日本ハンセン病学会雑誌    141部
[7] MDT薬品供与体制の整備
a.アドバイザリーコミティーの運営(諮問委員会の開催)
(a)第 1 回 1997年 6月 インド
(b)第 2 回 1997年10月 東京
b.供与対象国MDT評価調査
(a)派 遣 国 フィリピン、タイ、ネパール、ベトナム
(b)派 遣 者 延べ5名
c.対象国実務者による調査
(a)対 象 国  ベトナム、インドネシア、パプアニューギニア、ミクロネシア、ネパール、ブラジル、中国
[8] ハンセン病制圧特別行動プログラム(SAPEL)並びに制圧キャンペーン(LEC)
a.SAPEL/LEC支援
(a)対 象 国  ベトナム、ミャンマー、チャド、ブラジル、コロンビア、イエメン、ボリビア、スーダン、ネパール、トーゴ、インドネシア、カンボジア
b.SAPEL/LEC推進検討委員会(ILEP/WHO共同ワークショップ)の開催
(a)開催場所 スイス WHO本部
(b)開催期間 1997年7月18日〜19日
(c)参 加 者 52名
(2) アジア・アフリカ等における寄生虫症対策研究及び援助
[1] 技術者研修
a.中国寄生虫分子生物学の専門家研修
(a)研修場所 日本
(b)研修人員 1名(中国人研修生)
b.海外寄生虫技術者研修
(a)研修場所 タイ
(b)研修人員 12ヶ国 28名
[2] 現地技術協力
a.アジア・アフリカ等における技術協力
(a)派 遣 国 カンボジア、フィリピン、中央アフリカ共和国
(b)派遣人員 11名
[3] 薬品機材供与
a.アジア・アフリカ等に対する薬品機材供与
 (a)対 象 国 フィリピン、中央アフリカ共和国、カンボジア
 (b)供与品目 薬品、検査用機器等

■事業の成果

1980年初期から開始されたMDT(らい複合療法)の拡大強化の結果、1991年第44回WHO総会は「2000年までに公衆衛生上の問題としてのハンセン病を制圧する」という目標を決議した。1997年現在のWHO統計(Leprosy Status Report ’97)によると世界のハンセン病患者数は推定115万人にまで減少しており、登録患者数約88万人全てに100%MDTが実施されている状況となっている。これは、WHO及びNGOとの相互協力を背景とした各国政府の積極的な取り組みと努力によるところが大きい。さらに日本財団からの治らい薬供与支援プロジェクトがハンセン病制圧活動を支える大きな要因となっている。この治らい薬供与プロジェクトは、1994年10月のハノイ会議の席上で日本財団から協力表明がなされ、同年より5年間に亘って実施されているものである。同会議では、WHOの制圧決議の再確認、関係諸国の制圧に向けての決意表明と直面する諸問題の把握、並びにその具体的な対応策について協議がなされた。その結果、特に地理的、民族的等の要因でMDTが未だ届いていない地域をターゲットにしたSAPEL(ハンセン病制圧特別行動計画)並びにLEC(ハンセン病制圧キャンペーン)両プログラムが採択され、現在まで、WHOのコーディネーションによって、各国からのプロポーザルが集約され、世界の救らいNGOが協力を分担するかたちで強化推進されるに至っている。1996年10月のニューデリー会議では、2000年の制圧に向けて各国が抱えている問題点がさらに明確となった。
本年度当財団は、上記のような総合的な制圧支援体制のもとで積極的に協力事業を展開した。具体的には、上記SAPEL/LECをはじめ、昨年に引続き、MDT評価調査に伴うモニタリング、査察指導の推進等の協力支援を行うとともに、ハンセン病回復者の社会復帰及び障害予防、リハビリテーション等生活の質的向上を目指した啓発活動についての支援を行った。特に、WHO主催で日本財団並びにIDEA(共生・尊厳・経済的向上のための国際組織)共催の下に国連本部において開催されたハンセン病制圧マルチメディア展示会への協力を行い、ハンセン病制圧とハンセン病回復者の尊厳の確立にスポットを当てた画期的な企画として世界的に注目された。同展示会では、国連アナン事務総長、WHO中嶋事務局長並びにIDEAの関係者等の参画を得、ハンセン病制圧とその後に残る「社会的治癒」の問題へのひとつのアプローチとして今後その動向が期待されているところである。
「寄生虫症対策事業」においては、中央アフリカ共和国、フィリピン、カンボジアへ専門家を派遣し、各国における寄生虫症のための技術協力、並びに技術指導を実施するとともに、現地でのニーズに応じた薬品機材等の供与も行った。また、中国の寄生虫専門家研修(シニア)も実施され、寄生虫分子生物学分野での遺伝子工学等の技術の習得と寄生虫学への幅広い知識習得の機会とした。さらに、タイ国のマヒドン大学において実施されている海外寄生虫技術者研修は本年度で第21回目を迎え、その研修者が各国における寄生虫症対策を支える指導者として現在活動するに至っている。
以上、世界には未だ解決できない幾多の保健問題が残されているが、当財団の多岐にわたる継続的な協力活動によって、ハンセン病の制圧や地域に根差した寄生虫症対策が向上の方向に着々と進み、世界の人々の保健衛生の向上に大きく寄与できたものと思われる。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION