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■事業の内容

船舶のバラスト水に混入して移動する海洋生物が、本来生息していない海域に侵入・帰化することにより、当該海域における貝毒の発生、海洋生態系の破壊など環境に対して有害な生態学的影響を与えることが、新たな海洋汚染問題として取り上げられてきた。
 わが国においても、バラスト水による外来種の繁殖が報告され始めている。国際的には、IMO(国際海事機関)において、この対策として、船舶のバラスト水管理規制を義務化するための規則及び規則実施のためのガイドライン策定作業が継続して行われており、現時点では、同規則及びガイドライン案を2000年を目処にMARPOL73/78上条約の新附属書として採択される予定である。
 また、豪州、カナダ、米国等においては、自国の海域に入域する船舶に対して、入域前に洋上でリバラスト(バラスト水の交換)の自主規制を既に実施している。
 しかしながら、この方案については、その有効性が明確に確認されておらず、また船舶の安全性等さまざまな問題があり実施できない場合が多々生じる。
 豪州、米国、欧州諸国等では、このリバラストに代わる手段として、フィルター処理法、温度管理法、光処理等について調査研究を行い、その調査結果がIMO等に報告されているが、どの代替方策についてもその有効性が確認れていないのが現状である。
 このような観点から本調査研究では、効果的リバラスト代替手段について調査研究及び実験実証を行うことにより、本件に関する合理的な解決策及び国際的な対応策の検討に寄与し、ひいては海洋生態系の保護及び海洋環境保全に資することを目的として実施した。
 [1]調査項目及び内容
  [1] リバラスト代替手段に関する情報の収拾・整理
    国内外で実施されたリバラスト代替手段に関する調査・研究の状況等を取りまとめた。
  [2] リバラスト代替手段の実証
    オゾンによる海水中の海洋生物殺滅実験を実施した。
  [3] 代替手段の現状評価及び課題
    オゾン処理の評価及び実船への適用についての問題点を抽出した。
 [2] 報告書の作成
  [1] 題 名:船舶のバラスト水管理方策に係る調査研究
  [2] 規 格:A4判 85頁
  [3] 数 量:100部
  [4] 内 容:本年度調査研究に関する包括的な報告書
■事業の成果

地球規模の海洋環境保護問題として、船舶のバラスト水を媒体とする有害海洋生物の国際間移動とその拡散による海洋生態系の破壊が問題となっており、IMO(国際海事機関)のMEPC(海洋環境保護委員会)において、本件に関する検討がここ数ヶ年にわたり継続して行われてきている。わが国においても同様、バラスト水の排出による外来種の繁殖が報告され始めている。

 本件に関する対策としては、現状では、洋上におけるリバラスト(バラスト水の交換)が唯一の方策とされているが、この方法は、船体の安全性等多くの問題点があり万全の方策ではない。

 各国においては、このリバラストに代わるものとして、バラスト水の熱処理、電気処理、紫外線処理、フィルター処理等の代替手段の研究が行われ、研究結果がMEPC等に報告されているが、現時点では、どの方策についても実船への有効性及び適用性が確立されていないのが現状である。

 このような観点から、本事業では、リバラスト代替手段の検討に関して、国内外で考えられている各種方法について検討を加え、有効かつ各国で検討の行われていないオゾンによるバラスト水処理に関する実験を行い、当該手段の実船への適用に向けての、有効性の評価及び課題について取りまとめた。

 代替手段の選定等には、さらなる実験及び検討が必要であるが、科学的かつ客観的視点における本事業での検討結果は、IMOのMEPCの審議に反映できるものであり、わが国沿岸地域のバラスト水排出による海洋生態系への影響の最小化、すなわち海洋環境保護に寄与することはもちろん、わが国関係機関が今後対策を考える際の参考資料として有効なものと思われる。





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