
■事業の内容
港湾工事業界における高齢化による年齢構成の歪み現象、3K職場の一つである同業界での若年層の人材確保のむづかしさ、更に、港湾工事量の減少、港湾工事の効率化要求等によりOJTによる運転訓練の機会減少等が相まって、作業船の運転訓練を効率よく行う為の方法の確保が急務となっている。 運転訓練用シミュレータの開発事業の初年度として、作業船の運転訓練の現状、訓練項目及び現在抱えている問題点を把握し、シミュレータ開発の方向性を検討する目的で下記の通り実施した。 [1] 作業船の運転訓練用シミュレータ開発研究委員会の設置 当協会会員の専門家及び関係官庁・諸団体及び大学から学識経験者により構成される本委員会(15名)と具体的に開発研究を実施するワーキング委員会(6名)を設置し本事業を推進した。 [2] 海外文献による既存シミュレータの調査 海外において作業船運転に関し既存するシミュレータの実体を調査し、現状を把握した。 [3] 作業船運転の訓練に関するアンケート シミュレータ開発に先立ち、作業船運転の訓練の実体の把握と訓練をする上での問題点並びにニーズをアンケート形式で会員各社に対して調査した。 分 類 アンケート先数 回 答 数 ユーザー(港湾工事業者) メーカー(造船所機器構造) 34社 17社 24社 4社 その結果に基づき、調査対象の船種を選定し、作業現場での責任者である船長からヒアリングを実施した。 [4] シミュレータ開発の方向性 作業船に係わる関係会社からのアンケート及び選定した作業船種を統括指揮する船長へのヒアリング結果に基づき、作業船を運転するうえでの主要な技術を絞り込み、本事業が目標としているシミュレータの開発方向性を検討した。 [5] 開発シミュレータの有効活用 開発シミュレータの有効活用について、各種ケースを想定して、その実現性等を検討した。
■事業の成果
本年度は、向こう3年間かけて開発するシミュレータ開発研究の初年度に当たり、シミュレータ開発の為の準備段階と位置づけられる。従って、前述の実施内容の如く、事業活動の中心は「どのようなシミュレータを開発すべきか」の絞り込みに終始した。 [1] 海外文献による調査 船舶の操船シミュレータと異なり、作業船は種類も多く、一つのシミュレータにより全ての訓練が可能というものは存在せず、特定の船種に関するシミュレータは存在することが判明した。その代表的なものは、ドラグサクション浚渫船の運転シミュレータで、欧州を中心に存在していることが判明した。 従って、本事業が目指している各種作業船に共通する運転技術を抽出し、その中で重要な運転技術を絞り込み、それに関するシミュレータを開発するのは世界初と言っても過言でないことが解った。 [2] 作業船運転の訓練に関するアンケート及びヒアリング 作業船の運転訓練に求められる要素、要望の多い船種並びに運転訓練の現状での問題点等についてアンケート調査をおこなった結果、次のことが判明した。 [1] 運転訓練の現状 a.運転の訓練は、実工事を通じての実践訓練(OJT)が多い。 b.OJT方式の訓練をおこなう理由としては、船種毎に操船方法が異なることが大きな要因となっている。 c.現状での問題点は、工事量の減少により実践訓練をするほどの長期連続運転が不可能であり、施工能率の低下、安全面での不安、講師側乗組員の負担等が上げられる。 [2] 対象船の選定
アンケート調査及び作業船の需要動向等に基づき、要望が多く、且つ今後も需要が多く期待できる「多目的作業船」を運転訓練用シミュレータ開発の対象船として選定した。 [3] 対象船種に関するヒアリング結果 起重機作業と杭打作業の両作業が可能な非自航全旋回式多目的作業船の運転訓練用シミュレータの必要性について、3社に対してヒアリングをおこない、特に起重機作業に対する運転訓練用シミュレータ開発の必要性があることを確認した。 [3] シミュレータ開発の方向性 会員各位へのアンケート調査結果及び現場責任者である船長へのヒアリング調査結果に基づき、解析をおこなった結果、シミュレータの開発の方向性として下記の事項を定め、次年度の作業への基点とすることにした。 [1] 共通運転技術 操船及び位置決め作業 [2] 特殊運転機能 起重機作業 シミュレータの完成イメージとして、汎用型と簡易型を提案している。
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