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第二章

デイセンターとアネックス

スウェーデンのデイセンターとアネックス(分場)について

 

デイセンターは、地域で暮らす知的障害をもつ人たちの日中の仕事・活動(アクティビティ)の場としてかかせないものです。入所施設の中でも、仕事や活動の場はありましたが、それは社会とは隔絶した施設の中で行われていワした。現在は施設から地域のグループホームに移り住んだ人たちや、自宅に住んでいる人たちが利用しています。

スウェーデンでも、60年代までのデイセンターは現在のものより大規模であることが普通でした。その頃のデイセンターは、地域に住んでいる3050人の知的障害をもつ人たちの通う場として建てられ、その中で提供される活動プログラムも、単純な工業製品の組み立てとか簡単な包装とかを集団で行う作業が多かったのです。

大きな集団で同じ作業を行うことは、個人の障害や能力に適さない場合もあり、特に障害の重い人にとっては難しいものとなります。デイセンターの活動も70年代以降になってからは個人の発達や能力に合わせた仕事や活動が考えられるようになり、人数も35人の小さなグループで分かれて行うようになりました。また、このような変化は必然的にデイセンターの中の活動のみにとどまらず、デイセンターを出て地域の中で行う仕事や活動へと展開し、活動の種類と場を広げていくことになります。例えば、民間企業や工場の仕事、自治体の建物の中にあるレストラン、屋外では公園の管理と清掃や農場での仕事など、それぞれの個人に合った活動が考えられ、活動の場が展開されていきました。

こうした地域のデイセンターの活動が地域に展開し、活動の場が分かれていったものが「アネックス」と呼ばれるものです。アネックスは日本語では“分場”という意味になりますが、デイセンターの活動の場を地域に分散させたというより、さまざまな仕事や活動が地域に展開していき、必然的に少人数の活動の場に分散していった結果がアネックスで、これらがネットワークをつくりデイセンター活動をしているといった趣です。ですから、アネックスは活動の場の種類、職員の数、行っている仕事や活動の内容など、その一つ一つは個人の希望や条件に合わせたものとして考えられています。

ビデオに登場したシェヴデの博物館倉庫で働く4人の仕事もアネックスの活動ですし、ビルギッタやカーリーの働くカフェテリアもアネックスの活動です。アネックスはさまざまな場を使います。例えば、活動の場も役所の建物や民間のビルの中、工場などの大きな建物から、小さな店舗や一軒の家までいろいろな場所が使われます。また、職員の人数も知的障害をもつ人10人を職員1人で援助している所もあれば、56人の所に23人の職員、また必要があれば11で援助をしている所もあります。仕事や活動の内容については、地域の特性や個人の希望、障害の内容や能力などによってさまざまなものが考えられています。今回訪問したデイセンターやアネックスでは次のような活動が行われていました。

 

デイセンター(主に障害の重い人たち)の活動

日常生活訓練:洗濯やキッチンの練習など

音楽療法:音楽を使ってリズムや発声をする

手工芸:布や紙のクラフト、色づけや貼り絵などを作る

コンピューター:パソコン通信やコンピューターを使う

クッキー作り:お店に出すクッキーを作る

クリスターレン:五感に訴えて鎮静的な心理効果を作り出すためにいろいろな設備のある部屋を使い、リラックスする体験を楽しむ

その他:散歩、ピクニックやドライブ、買い物やレストランの利用

 

 

 






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