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スウェーデンの知的障害者福祉

 

第一章

法律

はじめに

 

みなさんはこのビデオをご覧になって、どのような感想をおもちになったでしょうか?

もちろん、このような短い時間でスウェーデンの知的障害をもつ人たちの福祉の全体像をご紹介することはできません。このビデオで私たちがお伝えしたかったことは、スウェーデンという国では知的障害をもつ人たちについてどのように考えているのか、どのような援助をしようとしているのか、その基本的な姿勢です。そのことを現実に暮らしている人たちの様子を通して見ていただきたかったのです。

ビデオには、長い間施設で暮らしていた人たちが、今ではさまざまな援助を受けながら、社会の中で一般の人たちと交わりながら同じように生活している様子が映し出されています。そこには、「どんなに障害が重くても、人間として普通の生活ができるように援助をしていこう」という、知的障害をもつ人たちの人権を大切にする姿勢がはっきりと示されています。

このビデオの中ではあまり触れませんでしたが、知的障害をもつ人たちの援助の背景に大切な役目を果たしているのが法律です。日本の現状から見ますと、福祉に関係する法律は無味乾燥で現実離れしたものというイメージをおもちだと思いますが、スウェーデンではいささか事情が違います。ここでは、この点についてやや詳しくご説明したいと思います。

 

最初の「援護法」

 

スウェーデンでは知的障害をもつ人たちについての法律は随分前からありました。しかし、いわゆるノーマリゼーションを基本とした発達障害者に関する法律が制定されたのは約30年前、1967年(1968年発効)のことでした。

この法律によって、すべての障害をもつ子どもたちに教育が保証されることになりました。そして、大人の人たちには、できるだけ普通の生活がおくれるように地域の中でさまざまな援助のメニューを準備しました。

内容は未熟なものでしたが、「まかない付き下宿」という意味のインアコデーリングスヘム(Inackorderingshem)という名称のグループホームも登場しました。入所施設も一つの生活の場として認められてはいましたが、法律の中では「自分の住居であるとか、両親と一緒であるとか、一般の住居に住めない場合」という条件付きでした。

しかし、当時はまだ入所施設に生活している人たちが多かったために、これをできるだけ小規模なものにして、地域社会に開かれたものにしようという考え方が強く打ち出されました。これはノーマリゼーション運動のきっかけとなった、知的障害をもつ人たちの両親の入所施設に対する批判に応えたものです。

 

「新援護法」

 

1985年、前の法律が大きく改正されました。正式な名称は「精神発達障害者のための特別な援護に関する法律」といいますが、スウェーデンでは一般的にこれを「新援護法」と呼びました(1986年に発効)。

この法律によって、援護を受ける権利のある人たちの範囲が広がり、知的障害をもつ人たちばかりでなく、自閉症などの障害も含んだ小児精神病的な障害をもつ人たちはもとより、成人になってから知的障害をこうむった人たちもこの法律の対象となりました。

 

 

 






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