□国際障害者年と障害者福祉
1981年「国際障害者年」は、「国連・障害者の十年」へと続き、1993年からは「アジア太平洋障害者の十年」が始まり、政府は平成5年3月「障害者対策に関する新長期計画」を策定
これらのことから、従来から議論のあった心身障害者対策基本法を最新の成果を盛り込んだものに改正しようとする機運が高まる
□心身障害者対策基本法の法的性格
心身障害者対策基本法は、障害者対策の基本的方針を定め、昭和45年議員立法として成立。これは心身障害者の福祉施策の基本となるもので、個別具体的な施策は関係省庁がその所管事項について個別法律で対応している。以下は主なその施策
・ 福祉施策 (厚生省)身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法
・ 所得保障 (厚生省)厚生年金保険法、国民年金法
・ 雇 用 (労働省)障害者の雇用の促進等に関する法律
・ 教 育 (文部省)学校教育法
・ 住宅の確保 (建設省)公営住宅法
・ 税の優遇措置(大蔵省・自治省)所得税法、地方税法
□議員立法で成立
関係団体の要望を踏まえ、23年ぶりに議員立法として検討。平成5年、関係議員の中で具体的に検討、本格的な改正内容となる
改正案は、各党賛成の議員立法として平成5年6月衆議院通過、参議院審議中に衆議院解散となり、廃案。同法案は細川内閣成立後の平成5年9月臨時国会で各党賛成の議員立法で提案された。11月12日衆議院通過、11月26日参議院で可決し成立した
□基本法改正の視点
(1)昭和45年制定以来、障害者施策の拡充が進展。この成果を踏まえ、施策の現況に適合したものとすべきであること
(2)平成2年、米国で制定された『障害を持つアメリカ国民法』(通称、ADA)が、わが国に大きな影響を与えたこと
□今回の改正の主な内容
(1)法律の題名 「心身障害者対策基本法」→「障害者基本法」
(2)法律の目的 従前の目的規程が一部簡略化し、新しい内容が追加
?@「障害者のための施策に関し、基本的理念を定め」
?A「障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し」
?B「障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野への活動への参加を促進する」
(3)法律の対象 障害者→身体障害、精神薄弱、精神障害の三つに括る
?@「てんかん」→精神障害の中でとらえる
?A「自閉症」→精神薄弱の中でとらえる
?B「難 病」→身体障害又は精神障害の中でとらえる
*付帯決議 (1)障害+長期の生活上の支障のある者は障害者の範囲に含める
(2)精神障害者とその他の障害者の施策に均衡を欠かない
(4)基本的理念 従前の個人として尊厳される趣旨に加え、国際障害者年の「完全参加と平等」の考え方の考え方が加わり、社会、経済、文化、その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとした
(5)障害者の日 12月9日→昭和50年(1975)国連「障害者の権利宣言」
国、及び地方公共団体はこの日に趣旨にふさわしい事業を実施
(6)障害者基本計画 ?@国、都道府県、市町村の計画策定
国に策定の義務づけ、都道府県、市町村は策定に努める
?A障害者施策推進協議会の意見
国は「中央障害者施策推進協議会」の意見を聞く
都道府県、市町村においても類似の規程を設けた
?B国会報告
政府は国会に障害者基本計画の報告し、今後は毎年障害者のために講じた施策の概況(報告書)を国会に提出する
*「障害者白書」というべきものが公表される
?C経過規程
施行の際に現に策定されているものは障害者基本計画とみなす
*基本計画として、平成5年3月「障害者対策に関する新長期計画」
(7)雇用の促進 雇用の促進に関する基本法を充実させる
事業者は障害者の雇用の安定を図るよう努めなければならないとしたことは大きな変化
(8)公共的施設の利用 国、地方公共団体の身体障害者、高齢者に配慮した各地域の「まちづくり計画」による指針、要綱、条例の策定推進
(9)情報の利用 障害者の利便の増進、情報を提供する施設の整備等
*平成5年5月「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送 身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」
*付帯決議 雇用の促進、公共的施設の利用、情報の利用は事業者の責務
(10)障害者施策推進協議会
「心身障害者対策協議会」を「障害者施策推進協議会」に改めた
?@国、地方とも障害者基本計画を審議する
?A中央障害者施策推進協議会の委員及び専門委員
障害者及び障害者の福祉に関する事業従事者のうちからも任命
*付帯決議 地方障害者施策推進協議会も同様の趣旨を生かす
□施行期日等 平成5年12月3日から施行
障害者施策推進協議会関係 公布日から起算して6カ月以内
附則:国の障害者基本計画案の策定事務は総理府が担当
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