わが国は、平均寿命の伸長と出生数の減少により、世界でもいまだ経験したことのない超高齢社会を迎えようとしています。こうしたなかで、国民1人ひとりが真の豊かさを実感でき、生きがいに満ちた明るい長寿社会を築いていくことが肝要です。
わが国は、欧米先進国に比べ、高齢者ケアに対する国民の関心は必ずしも十分ではなかったと思われます。
私ども日本船舶振興会は、笹川医学医療研究財団、そして読売新聞社と共催し、平成2年に第1回の高齢者ケア国際シンポジウムを開催いたしました。内外の専門家の皆さまのご支援を得て、高齢者ケアの現状と問題点、痴呆性老人のケアのあり方、望ましい生活環境、また高齢者のクオリティ・オブ・ライフを主要なテーマとして開催し、今日に至っています。
本シンポジウムは、今年で5回目を迎え、いちおうの締めくくりとして、「日本の高齢者ケアのビジョン」をテーマに、海外から多くの著名な先生方を、また国内からも各分野においてご活躍の先生方や実際に現場でボランティア活動をされている方々、そして医療分野の学生の方などをお招きし、わが国の高齢者問題について、各国のさまざまな取り組みを学び、また相互に情報交換を行い、日本の伝統や文化に根ざした、わが国独自のやり方にどのように適用させていくかを模索したいと考えています。
私どもは、いままでさまざまな人道活動を行っておりますが、特に老人問題につきましては、非常に深い関心をもっており、これからご講演いただきます日野原重明先生のご指導を仰ぎ、福祉先進国の優れた事例を取り入れ、多様化する福祉の必要性に対応するための機能を集約した新しいタイプの高齢者福祉施設を、「ケアポート」という名称で富山県の庄川町、島根県の吉田村にもつくりました。また現在は、第3番目の施設を長野県の北御牧村に建設中です。
このケアポートは、高齢者の介護支援だけではなく、地域の交流の場としての役割も果たしており、地域住民に活用され、注目を集めているところです。
老人問題は、すべて国や地方自治体に任せるという従来型の考えではなく、ボランティア活動などを通し、一般市民に対しても幅広いご参加をいただいています。また、高齢者の潜在能力を顕在能力に変えるために、単にハード面のみならず、ソフト面に対しても、高齢者や地域のニードにこたえるため、さまざまな工夫を凝らしているところです。
高齢者がいま、私たちになにを期待しているのか、私たちになにができるのかをいっしょになって考える。老人や子どもも、あるいは身体の不自由な方々も、すべて人々は平等であるという理念のもとに、国民の幅広い共感ならびに参加という視点に立った、みんなが参加する温かい福祉社会を創造していこうと考えています。
本国際シンポジウムが、本日ご出席の皆さまにとって有意義なものになりますよう、心から期待しています。
最後になりましたが、講師の先生方のご参加を心から感謝中し上げますとともに、本シンポジウムの開催にあたり格別のご理解を賜りました、WH0、厚生省、自治省、総務庁、全国社会福祉協議会、全国知事会、全国市長会ならびに全国町村会など、多くの関係機関の皆さまに厚く御礼を申し上げます。
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