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高齢者ケア国際シンポジウム
第1回(1990年) 不安なき高齢化社会をめざして


ごあいさつ

財団法人 日本船舶振興会会長
日本船舶振興会


人間にとっていちばん大切なことは、生命、身体、健康です。
ここ数年来の世界の情勢変化はまことに目をみはるものがあります。米ソ冷戦の終結、ソ連を中心とする東ヨーロッパの民主化の動き、東西両ドイツの統一、あるいは韓国とソ連の国交樹立、日本と北朝鮮との友好的会談の実現等々、いずれも歴史上に残る変化といわざるを得ません。
しかしながら、こうした輝かしい成果の一方では、イラクによるクウェート侵攻に端を発した、中束での緊張の高まりが世界を震撼させています。さらに、森林などの乱開発による地球環境の破壊や、発展途上国の飢餓および人口問題など、早急に解決されなければならない新しい問題も発生しています。
わが国は第2次大戦後、国内資源の少ないことを自覚し、勤勉な国民性と教育水準の高さに支えられて、高い科学技術を実用化し、経済大国に成長しました。また、これに伴って生活環境も改善され、気がついてみれば、わが国は世界第一の長寿国となったのです。高齢化への速度は、世界でも例をみない速さであり、このまま進んだとすれば、21世紀初頭には65歳以上の人が5人に1人の割合となり、未曽有の超高齢化社会になるとされています。
このような人口構造の急激な変化によって、解決されなければならない新しい問題がいくつか発生してきています。しかし、高齢化に伴う痴呆や寝たきり老人などの増加に対し、家族をはじめとする、周囲の人々の対応が遅れ、また老人ホーム、ケア・センターなどの入所施設の整備、医師・介護士など養成などが追いっかないといった現状にあります。そして、その介護のあり方等についても、多々改善が必要です。
私は91歳を迎えましたが、国内外での業務に追われ、老眼鏡も持たず、元気に毎日、忙しい日々をすごしています。高齢者といえども、みんながそろって生きがいのある、充実した日々を送ることが理想ではないかと思います。
そこで、このような高齢化社会のなかで、高齢者特有のさまざまな症例について、どのような治療が望ましいのか、また周囲の人々がどのような環境のなかでどのようなケアをするのが最善なのか。さらに、老人病を予防し、健やかに老いるには何を準備すべきかなどについて、デンマーク、スウェーデン、アメリカ、イギリス、オーストラリア等の福祉先進国に学び、これらの国々がこの高齢者問題にいかに取り組んできたのか、また今後の問題点は何か、を知ることははなはだ重要なことであると考えます。いまここに内外のこの分野の世界的な権威者・専門家が集い、そしてご討議願い、わが国の今後の方策を探ることができたとしたら、素晴らしいことであると考えます。
最後に、本シンポジウムの開催に当たり、後援をいただきましたWH0、厚生省、読売新聞社、さらにご多忙な時間を割いてご講演いただく講師の諸先生方ならびにご参加いただきました会場の皆さまにお礼を申し上げます。
平成2年11月20日
財団法人 日本船舶振興会
会長 笹川良一





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