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●以上のことから、『専従スタッフの配置』という基本方針で、今後の組織体制が固まった。しかし、このことについては時期尚早という意見もある。やはりこの専従スタッフの生活費の見通しがたたないうちに、動き出すのはどうかという慎重論である。また、現状のままボランティア中心の活動が続けられればそれでよく、何もそこまでリスクと苦労を背負う必要はないという意見もあり、種々の意見が入り交じっていることは否めない。

 

●この問題は、根本的には“ボランティア活動の限界(線引き)”にあるのではないかと思われる。ボランティア活動は本来、“楽しく、気楽に、無理なく”できる範囲のものであるが、活動していくうち、社会的な役割が自動的に定まってきて、箍(たが)がかかるように徐々に“仕事化”していくことになる。そうなると、もはやボランティア活動ではなくなってくる。結局、それをどのレベルで断ち切るかというボランティアの限界(線引き)を明確にする必要に迫られるのである。

 

●専従スタッフの配置は、別の見方をすれば、こうした止めどもなくボランティアとはいえなくなるような活動量の拡大に歯止めをかけるためにあるということもできる。ボランティアが“楽しく、気楽に、無理なく”できる範囲以上のことはすべて専従スタッフが担うというものである。しかし、その一方で、専従スタッフの給料を確保するための活動を拡大させることになり、それにあわせて必然的にボランティアとしての歯止めがきかなくなる恐れも十分にある。

 

●一般に、市民団体が活動を長く続けると、こうしたボランティアが抱える根本的な問題にぶつかり、一朝一夕にメンバー全員が納得できる結論を得ることは容易ではない。しかし、いくら机上で考えても解決できる問題ではなく、前進するためには、少しずつ試行錯誤をしながら、その会にふさわしい組織体制を構築していくよりほかはない。

 

●いずれにしても、専従スタッフの配置問題は、専従スタッフの生活に係わる問題であるだけに、この場で軽々に結論を出すことを差し控えなければならない。そこで、ここでは一つの叩き台として、当会の組織体制についてA案およびB案の2案を提示し、短期(5年以内)、中期(6〜10年)、長期(11年以降)のそれぞれのステージングに分けて、その組織体制のイメージをまとめることにしたい。これをさらに改善するなどして、最終的な方向づけの決定を関係者に委ねることとしたい。

 

 

 

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