はじめに
福祉を障害当事者の手に取り戻そうとする流れは、1970年代の米国の自立生活運動に始まり、日本では1986年のヒューマンケア協会を嚆矢として全国に広がって、今や世界の潮流になりつつあります。しかし一方でこれに逆行するような動きも、英国、米国、日本で始まっています。
目指すべき最終的なゴールは、誰にも分かっているはずです。それは、福祉がその利用者のためにだけ存在することです。
解決しなければいけない問題の一つは、高齢化社会への対応として出される各国の施策が、障害者の地域ケアに持ち込まれようとしているところからきています。第二には、地域ケアという人類未到の事態に直面しながら、どの国においても、施設という閉鎖系のシステムや、医療やリハビリテーションという地域ケアの実践の場を持たない専門家しか存在しない、という不幸な事態からきています。
私たちは、ここ数年の間に、介護保険法が発足したばかりのドイツ、セルフマネジメント試行モデル事業下のカナダの各国の状況を、当事者の目で確認してきました。それをふまえてこのたび、コミュニティケア法が施行された英国を訪問しました。そして出した結論が、ここにあります。
地域ケアにおいて、ごまかしはききません。サービスの利用者がよしとするものしか、正しいものはないのです。本書は、地域ケアヘの転換の中で、新たなシステムを生み出そうと苦しんでいる世界への提言です。障害者の地域での自立生活の支援においては、わが国でも障害当事者の運営する自立生活センターほどの成果をあげた実践例はありません。その自立生活センターで培われたノウハウを地域ケアで生かしていくことが、今、求められているのです。
本書は第1部「英国コミュニティケアと障害者」英国研修報告書、第2部「ケアコンサルタント・モデルの提案」で構成されています。第1部は、大川宣弘、朝比奈ミカの作成した研修記録を、中西由起子、朝比奈ミカが編集しました。第2部は、ヒューマンケア協会が設置した「ケアマネジメント研究委員会」の委員の意見を参考に中西正司と立岩真也が、後判については立川市でのケアガイドライン試行事業報告書をもとに加筆・改定して、執筆しました。
本書は、ヒューマンケア協会が日本財団の助成を受けて行った、「身体障害者ケアマネージャー育成プログラムの構築」の報告です。英国研修と本書の出版には、日本財団のご協力をいただきました。貴重な意見を下さった研究委員会の委員、執筆・編集にご協力頂いた皆様に、感謝の意を表します。
1998年1月1日
ヒューマンケア協会「ケアマネジメント研究委員会」代表 中西 正司