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各方策の具体的内容は次のとおりである。

 

1) 経営基盤の強化

経営基盤とは、「ヒト、モノ、カネ、情報」といわれているが、兵庫県の中小造船事業者を「ヒト(人材、労働力)」の面で見ると、従業員数が少なくしかも高齢化が進んでいる。「モノ(設備)」の点では、ドック、船台等の規模が小さく老朽化が進んでいるといった問題の他に、NC機械などの新鋭機械の導入が遅れている。さらに「カネ」においても、資本金の小さな小規模事業者が多く、設備投資や情報力の強化に必要な資金の調達力も弱い。そのため、需要構造の変化など企業を取りまく環境変化へ適切に対応しにくくなっている。したがって、経営基盤の強化がぜひとも必要であるが、個々の事業者の努力だけでは限界があるため「共同化」を通じて強化を図ることが望ましい。

小規模造船事業者が共同化によって経営資源を統合することができれば、個々の事業者だけでは達成しにくい「規模の経済性」が得られると考えられる。共同化の手段としては、企業の合併・集約ばかりでなく、一部分の共同・協業化を行う事からはじめても十分な効果は上がるものと思われる。例えば、資材調達における交渉力の向上(一括発注による値下げなど)、設備投資の効率向上(個々の小規模事業者が小さな投資を行うかわりに、まとまった資金を投入した効果的設備投資により生産の効率化が達成できる)、多角化の促進(技術提携や人材交流)あるいは若年労働者の雇用の円滑化等が可能になると思われる。特に、修繕を専門に行う小規模造船所の共同化は「規模の経済性」の効果が期待できよう。

また、事業者が将来においても安定した経営を確保するためには、「ヒト」の面での経営基盤の強化が不可欠である。現時点で若年労働者の確保と育成がぜひとも必要であり、そのためには若年労働者や女性労働者が働きやすい様に作業環境を改善することが必要不可欠である。若年労働者の雇用促進においても個々の事業者の能力では限界があるため、共同によるイメージ向上キャンペーンなども検討する必要がある。さらに、造船以外の分野への進出により造船需要減少への対応を図ることも経営基盤の強化にとって必要と考えられる。そのためには、今後、需要が高まると考えられる産業(リサイクル産業や環境保全産業等)についての情報収集や他産業の事業者との連携を進め、新たな事業展開を図る必要がある。

 

 

 

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