第1章 調査研究の概要
1. 調査研究の背景と目的
我が国の中小造船業の経営環境は、景気の低迷による新造船需要の落ちこみと価格の低迷等により厳しい状況が続いている。兵庫県の中小造船業においても同様の状況であるが、これに加えて零細規模の事業者が比較的多いという特性があるため「経営基盤が脆弱で設備規模も小さい」、「施設・設備の近代化や技術力の向上がむずかしい」、「労働者の高齢化が進んでいる」といった構造的な問題も抱えている。
兵庫県の中小造船業がこれらの問題点を克服し、今後も事業を維持、発展させるためには、海運造船合理化審議会意見書に指摘されているように、「地域の特性を生かした高度化の推進」、「舶用工業との協力関係の強化」等が必要である(注)。そのためには、今後の経営環境の変化に対応するための指針(経営ビジョン)が必要と考えられる。
そこで、(財)日本小型船舶工業会は、兵庫県に立地する中小造船業の中長期的な展望とそのあるべき姿を示す「中小造船業のビジョン」の策定を目的とする調査研究を実施することとした。具体的には下図のフローに示すとおり兵庫県における中小造船業とそれに密接に関係する舶用工業の現状をアンケート及びヒアリング調査等により把握するとともに、中小造船業を取りまく社会経済環境等の変化を把握し、地域の特性を生かした中小造船業のビジョン策定を行うものである。
(注)海運造船合理化審議会意見書「今後の造船業及び舶用工業のあり方について」(平成8年7月)における造船業の課題解決方策の中に以下の項目がある
・ 中小造船業の高度化(最新造船技術の導入、地域特性を生かした経営合理化の推進)
・ 造船業と舶用工業との協力関係の強化
2. ビジョンの目標年次
ビジョンの目標年次は、2005年とする。