4.3 日本沿岸域の長周期波の出現状況の解析
今回の解析で長周期波の大きさを表すパラメーターとしては、永井らが用いている周期30秒以上の周波数スペクトルの0次モーメントm0Lを主として用い、これを全周波数に対する0次モーメントm0と比較し、併せてm0Lを構成する周波数帯についても、30〜60秒、60〜300秒、300〜600秒、600秒以上の4つに分割して検討した。
4.3.1長周期波の経時変化
(1)地点別経時変化
各地点別に解析期間内について月別にm0、m0Lおよび歪度を図-4-4に示した。図中で横軸は時間軸を示し、数字は日付を示す。左の縦軸は対数表示でm0とm0Lを表しているがm0Lはm0に比べ2桁低い座標軸となっている。また、外洋からの進入波に対して遮蔽域となる伊王島、釜石および、アシカ島ではm0、m0Lとも1オーダー低い座標軸で示し、さらに、港研については2オーダー低い座標軸を用いている。右の縦軸は正規座標で歪度を表している。
まずこれらの図を全般的に見ると、m0Lは概してm0の時間変化に追従して増減する傾向が見られ、高波浪時に大きく、低波浪時に低い傾向を示している。
また、m0Lはm0と比較すると、ときおり時間的に急激に変化するケースが見られ、たとえば輪島での2月2日のように前後の観測値に比して急激に大きな値を示している。この輪島においてm0Lが大きくなった前後の時刻の水位の時系列とスペクトルを図-4-5(1)に示した。m0Lが大きくなった時刻とそうでない時刻の波形およびスペクトルを比較しても、目で見る限り正常な波浪データと判断され、波高計の異常とは考えられない。
また、図-4-5(2)に示すように、2月2日〜3目にかけて、輪島だけでなく、鳥取および玄界灘でもm0Lがスパイク状に急激に増加している様子が見られる。
また玄界灘、鳥取、輪島の各地点でm0Lの急激な増加が同時期に連続的に発生しているケースも見られ、この場合ピーク時刻は一致しないが、ピーク時刻が順に西から移動しているようにも見られる。
また、8月28日〜29目にかけては、八戸、釜石でも同様な現象が見られており、このような現象については、その成因等さらに検討・考察を加える必要がある。
一方歪度については、これらの図によれば、ほぼ0を中心に±0.2の範囲に集まって変化しており、これは波形が正規分布と大きくかけ離れてはおらず通常の波形と似た特性を持っていることを示している。