日本財団 図書館


1.4 研究開発の成果

 

本研究によって、各章ごとに得られた成果は次の通りである。

 

(第2章 長周期波に関する最近の研究結果、研究論文の調査)

 

最近日本沿岸のいくつかの港で大きな問題になりつつある長周期波による船体動揺に関する論文を収集し、その研究成果をとりまとめた。

 

(第3章 長周期波による船体動揺の実態調査)

 

日本国内の港湾58ヶ所のバースマスターまたはバース管理者に対し、長周期波による船体動揺の発生状況の実態についてアンケート調査を行った。さらにこれらの港湾の中で長周期波が問題となっている代表的な港湾として、苫小牧港および苓北発電所、細島港を抽出し、船体動揺の実態とその対策等について現地ヒヤリング調査を行った。

その結果、アンケートについては43ヶ所から回答を得ることができ、そのうち13港で年間6件以上の荷役障害が発生していることがわかった。これらの荷役障害に対する対策として、気象.海象観測の実施、気象海象予測情報の入手、動揺増大時の係留索の運用管理体制の強化等が行われていることがわかった。

また現地ヒヤリング調査では、特に動揺による荷役障害の頻度が高い苫小牧港については、全入港船舶の7%で荷役障害が発生し、それは主に「底うねり」と呼ばれる長周期波が原因であり、この長周期波の予測式も検討し精度検証も行われていることがわかった。

さらに苓北発電所については、現地波浪観測を実施し、港外波浪データから港内長周期波の算出を行っていることや、波浪予測情報を入手していることによって確実な入出港管理が行われてことが示された。

 

(第4章 全国港湾海洋波浪情報網(ナウファス)による日本沿岸域の長周期波の出現状況の解析)

 

1996年1年間のナウファス観測地点の中から代表的な18地点を抽出し、全地点の2時間毎の全データについて、波浪の全エネルギーm0および長周期波成分のエネルギーm0Lを計算し、その出現状況特性を解析した。

その結果以下の特徴が分析された。

?m0に比較してm0Lは0.1%〜10%の値を示し、その比率は一定しないが、m0が大きい時は概ねm0Lも大きくなる。

?高波の立ち上がり期や波高の減衰期にはm0Lはm0の変化に一致せず、立ち上がりが早く、減衰が遅くなる傾向が見られる。

?近接する数観測地点で、ほぼ同時にm0Lが急激に大きな値を示す例が見られる。

 

(第5章 船体動揺に影響を及ぼす長周期波成分の把握)

 

第3章の長周期波による船体動揺の実態調査および第4章の日本沿岸域の長周期波出現状況の解析結果から、船体動揺に影響を及ぼす長周期波成分がどのような周期帯に属するかを、地域的、季節的な特性を考慮しながら把握した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION