第1章 事業の概要
1.1 調査研究の目的
地震津波による災害・海難の発生を未然に防止するためには、過去の経験的知識と最新の科学的知見に基づく情報・判断により冷静・迅速・的確な対応が必要である。
従来では、地震津波に関する情報を予め提供することが技術的に困難であった。
本調査研究では、最新の成果を活用し、過去の地震津波に関する資料収集を行うとともにシミュレーションプログラム開発を研究し、設定するモデル港湾についてシミュレーションを実施することにより、地震津波に関する情報を予め提供することを可能とし、人類の生命・財産に対する安全、船舶航行の安全及び学問上の進歩発展に寄与し、もって災害・海難の防止に資することを目的とするものである。
1.2 調査研究計画の概要
本調査研究は、震源域(浅海、深海)の相違による入射角と津波の挙動研究、港湾の地形要素と津波の挙動研究、過去の津波によるシミュレーションの検証等を行い震源から沿岸までの津波伝播、遠浅海岸での摩擦減衰、波形変形、河川への遡上に対応するプログラム、リアス式海岸での狭い湾、急峻な地形での遡上に対応するプログラム、陸上への越波に対応するプログラム等を開発する。
研究の全体では平成8年度からの3か年計画としており、2年度目にあたる平成9年度はモデル港湾を東北地方の太平洋側の3か所に設定して下記の内容で行った。
なお、最終の平成10年度は、モデル港湾を本州の南岸に替えシミュレーションプログラムの改良及びワークステーションヘのプログラム、データの移植、マニュアル整備等を予定している。
1.2.1 シミュレーションプログラムの改良
プログラムには基礎プログラム、震源から沿岸までの津波伝播プログラム、遠浅海岸での摩擦減衰、波形変形、河川への遡上に対応するプログラム等を含み、モデル港湾に関する既存の研究事例及び数値実験手法の調査と分類・整理及び検討を行い、前年度開発の基礎プログラム、伝播プログラムを改良した。
1.2.2 モデル港湾の設定及び現地踏査
モデル港湾として設定した宮古、釜石、大船渡の各港の港湾資料、海底地形資料の収集・整理及び現地踏査を行った。
1.2.3 シミュレーション実施及び再現性の検討
下記項目について行った。
? 対象領域及びメッシュサイズの決定
? 地形データの作成
? シミュレーション実施
? 結果の図化
津波到達時間分布
津波最大水位分布
津波波高経時変化
津波流速ベクトル分布
津波最大流速分布
津波流速経時変化
? 再現性の検討 既往データと比較して行った。
1.2.4 数値計算プログラムの改良、再計算
シミュレーション結果に基づいて検討の上、実施した。