3.2 今後の課題
3.2.1 SARによる流氷判読の問題点と課題
SAR画像から流氷情報を判読する際の問題点としては以下の点がある。
・ 画像上に見えているものと現地の状態とが直感的に対応しない。
・ 流氷・海面ともに一定の散乱パターンを示すわけではない。
このため肉眼による判読性を向上させ、画像解析による流氷抽出技術を進展させるための課題としては次の点が上げられる。
・ 現地調査データとSAR画像との対照による判読キーの蓄積
・ 判読者が経験を加味しながら対話的に処理を進められる流氷解析システムの開発
・ 後方散乱係数-氷厚の調査事例の蓄積と解析技術の開発
・ 既存の観測技術(可視センサ、マイクロ波放射計、航空機船舶の目視観察など)との組み合わせで判読する手法の検討
また、今後打ち上げられる衛星によって流氷観測の機会が増加するものと思われ、それらに対応できるよう準備する必要がある。主なものはSAR、マイクロ波放射計、高解像度可視近赤外センサなどである。今後打ち上げられる衛星で流氷観測に有用と思われるものを表14にまとめた。

これらの衛星の内、アメリカの民間高解像度衛星は緊急撮影サービスを行うとしており、最短では数時間〜1日で画像が入手できる可能性がある。
3.2.2 水路業務への適用における問題点と課題
衛星搭載型SARを水路業務へ利用する場合の問題点としては、
・ 撮影から画像の入手までに時間がかかり速報性に欠ける。
・ 毎日、画像が取得できるわけではないため移動の激しいオホーツク海の流氷を十分追跡できない。
・ 取得コストが高い。
などの点があげられる。今後、RADARSAT/SARを流氷情報などのルーチン業務に利用するためには、
・ RADARSATのリクエスト・国内での受信・データ配布体制の整備
などが課題になると考えられる。