2) 標準偏差/平均値画像
i) 方法
前項の平均値画像と分散値画像を比較すると平均値が大きい部分は分散値も大きい傾向が見られた。しかし、同じ高輝度部分であっても流氷域は空間変化が大きく海面部分は相対的に滑らかであると考えられる。この差を強調して高輝度部分を海面の風浪域と流氷域に分離するために、10×10ピクセルの各部分について分散および標準偏差を平均値で割り、それぞれ分散/平均値および標準偏差/平均値画像とした。
ii) 結果
分散/平均値画像を図27に標準偏差/平均値画像を図28に示した。
分散/平均値画像では、流氷域の内、白い氷盤および黒い氷盤の均質な部分が黒く表現され、その他の流氷域は白く表現された。海面の風浪域はやや白く残るものの分散値画像と比較すると流氷域が強調される結果となった。また知床半島北側の流氷と海面の混在域では原画像で流氷らしいと思われる部分が白くなり、風浪で白く見えていた海面部分は黒く落ちていた。
標準偏差/平均値画像は、分散/平均値画像に見られた特徴がさらに強調される結果となった。海域の西側に広く見られた風浪域はほぼ全体が黒く示される一方、流氷域は白く残っており、期待した効果が認められた。ただし、分散/平均値画像に比べて流氷域のコントラストはやや弱く、特に知床半島北側の混在域では流氷域が一部で不明瞭となっていた。また、知床半島東側では陸の影で風の弱く黒く示されていた海域とその周辺の風浪域の境界が白く強調される結果となった。
しかし、海域全体に対する均一な処理によって風浪域と流氷域がある程度分離できたことから、部分画像の統計的指標による海面と流氷の分離の可能性が示された。
標準偏差/平均値を図20に示した部分画像について算出し、横軸に平均値、縦軸に標準偏差/平均値をとって散布図として図29に示した。
平均値-標準偏差/平均値図では、右下(高平均、低標準偏差)に白い海面と白い氷盤、左上(低平均、高標準偏差)に黒い海面と黒い氷盤が分布し、流氷はその中間に位置した。海面1のみは平均値が極端に低いため独立した位置に示されている。
この結果から平均値の閾値を設定することで黒い海面と黒い氷盤をその他の部分から分離でき、さらに標準偏差/平均値で閾値を設定することにより白い海面と白い氷盤を流氷域から分離することができる可能性が示された。
1例の画像のみからでは不十分であるが、事例を蓄積することにより、流氷と海面の分離方法として標準偏差や平均値をもとにした教師付き分類などを適用することもできると思われる。