津軽(つがる)海峡(海図1159、10)
この海峡は、日本海と太平洋を結ぶ重要な通航路となっており、また、海峡中央部は本州と北海通を結ぶフェリーなどの航路と交差し、さらに東口付近では船舶交通が輻輳している。
気象 「やませ」(東寄りの風)(後述)、夏季の濃霧、冬季の吹雪・突風など、この海峡特有の厳しい気象がある。
風 強風の風向は西〜北西が特に多く、東〜南東、南西がこれに次ぐが、北及び南方間の強風は非常に少ない。
冬季 いわゆる北西季節風が強い。陸奥湾内では西寄りの風が多いが、風速は比較的弱い。
海峡部では西寄りの風速が強く、特に龍飛埼、大間埼、尻屋埼は年間を通じて強風が多く、1カ月に20日以上にもなる。
春季 北西季節風から南東季節風に変わる時期で、海峡西部では西寄りが多いが、尻屋埼付近では南東〜東寄りの風が多い。
夏季 一般に南東〜東寄りの風が卓越するが、風速は弱い。尻屋埼・平館では南東、青森では北の風となる。
秋季 南東季節風から北西季節風に変わる時期で、年により西寄り又は東寄りの風が多くなる。11月になると再び冬の季節風型の西〜北西の風になり、風速もしだいに強くなる。
やませ この地方で東寄りの風を俗に「やませ」という。これは主に、日本海を北東進する低気圧により時々突然に起こり、その勢力は大きく、雨・雪を伴うため船舶の航行を困難にする。これは通例北風がしだいに東〜南風に変わるもので、風向の変化が急激なほど風力が大きく、断雲が多く急に南東方に暗雲が現れるものは最も強烈で、海峡の中心線付近で特に風力が強い。春季・夏季には回数は多いが風力は比較的弱く、秋季・冬季は最も猛烈で急激である。1回の吹続時間は冬季約14時間、春季約19時間で比較的短く、夏季22時間、秋季約25時間で長い。これは海上から来る温暖多湿な風であり、これに伴う降雪は雪片が大きく、積雪が数分で数センチメートルに達することがあり、また、視界を妨げて航海に支障を及ぼす。
霧 いわゆる海霧(ガス)で、冬季にはほとんど見られないが、晩春〜夏季にしばしば発生し、6月・7月には最も多くなり、7月・8月には濃霧が海峡一帯を覆うこともあるが一般に局地的なもので、西口よりも東口で多く、また南部よりも北部で多い。
龍飛埼付近は局地的濃霧地帯で、対岸の白神岬方面にかけて帯状となって発生することも多い。
日出前後に発生することが最も多く、その継続時間は1〜3時間のものが多いが来襲性の霧は長時間にわたり、月別では7月に最長が見られ、時には数日間にわたることもある。
東北東〜南南西、特に南寄りの風で発生することが多いが、西口付近では南西の風で発生することも比較的多い。
来襲性のものは通常濃霧となり、「やませ」に伴って来襲するものは極めて濃厚で、7月・8月に多く見られる。
海・潮流
海峡の両端にあたる日本海側と太平洋側との潮汐は非常に異なっているため、この海峡では相当に顕著な潮流を生じ、また、本州北西岸に沿って北上した対馬暖流の大部分が津軽暖流となって海峡を東進して太平洋に出るから、この海峡の流れは潮流と海流が合成されたものとなるが、一般には海流が潮流に勝るから、流れの大勢は海流に支配されて常に東流する。
(詳細については、書誌第102号「本州北西岸水路誌」を参照されたい。)