に,無指向性の空中線が使用でき,低速データ通信ができる標準Cが導入され,前項のナブテックス受信機と同じような機能を持つ高機能グループ呼出(EGC)受信機も併置される。コスパス・サーサット・システムは,遭難用に国際協力によって運用されている衛星システムであり,406.025MHzを送信する極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)が使用される。これら衛星技術の利用に関しては8・5節を参照されたい。
GMDSSのもう一つの大きな特長は,遭難・安全通信を全世界的にしたことである。そのため,VHFを主体とした短距離のAl水域,MFを主体としたA2水域,インマルサット衛星通信を主体としたA3水域と,インマルサット静止衛星による通信が不可能で,短波(HF)通信に頼る高緯度のA4水域に分けて,それぞれの航行する水域別に装備する無線装置を規定してある。なお,従来の中波の無線電話の警急信号(いわゆるピーポー信号)の送信と自動受信関係の機器は1999年1月31日までは,各船舶に備付けられることとなっている。
GMDSSでは,それぞれの水域に対していずれも次のような機能が考えられていて,遭難・安全通信についてそれぞれの無線装置が対応している。
(1) 遭難警報(Alerting)
VHF,MF,HFのDSCと衛星通信が使用される。この送信の余裕のない遭難船のときは,極軌道衛星利用,静止衛星利用又はVHF利用の非常用位置指示無線標識が自動浮上して送信を開始する。他の手段がないときは非常用位置指示無線標識は船上で送信させることもできる。これらの送信には,自動的に船舶の識別が付されている。送信の余裕のあるときには,DSCは遭難位置を付して(自動的に航法装置からのデータの導入もできるが,それは要求されていない)警報できるが,常時それを行うことは期待できない。極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置の送信位置は,コスパス・サーサット衛星によりその位置を5km以内に決定でき,これは全地球的に可能である。しかし,静止衛星利用の非常用位置指示無線標識装置の場合は位置の決定はできないので,この場合は,何らかの方法で遭難位置を自動的に付加することが要求されている。
(2) 捜索救助協力通信
遭難の発生とその位置を知ったとき,救難機関は行動を開始するとともに,付近の船舶に通報する。この通信は各種の無線電話,DSCが使用されるほか,後述の海上安全情報の放送も使用される。
(3) 現場通信