このような電波は,地表面に近い大気中を通るので大気の屈折率を受ける。大気の屈折率nは気圧,温度,水蒸気圧(湿度)の影響を受けるが,地上では1.0004と1にきわめて近い。そこで実用上の便利さから,N=(n-1)×106という値をとり,これを,N単位(NU)で,屈折指数と呼ぶ。標準的な大気では,高さが高くなると空気が薄くなるので屈折率は減少し,その変化は高さの指数関数的であるが,高さlkmまではほぼ直線と見なされる。屈折率の高さに対する傾度は,△N/△h=-39NU/kmである。このように,高度が高くなると屈折率が減少するので,電波は下向きに屈折をして,見通し外まで到達することが可能であり,電波の屈折の曲率半径は近似的に,1/R=-dn/dhである。このような状態の電波も達距離の計算には,図7・9の(b)と(c)に示すように二つの方法がある。一つは,電波の通路を直線とするように地球の半径を大きくするもので、これを等価地球半径と呼び、それは標準大気では地球半径の4/3倍となる。二番目は,地球を平面と見なしたときの大気の屈折率で,この場合は電波の通路は上向きになり,修正屈折率と呼ぶ。この場合,修正屈折指数として,N単位を用いると,標準大気では,△H/△h=118MU/kmとなる。