(2) 空中線
インマルサットシステムにおいて船舶が送信する周波数は1.6GHz,また,受信する周波数は1.5GHzである。この周波数帯において標準A船舶地球局として必要な利得23dBを得るためには,パラボラ空中線を用いるのが最も効率的である。
最も広く用いられているパラボラ空中線は図6・21に示すように,回転放物面反射鏡の焦点に一次放射器としてクロスダイポール空中線と反射板を置いたものである。送信に用いる場合には送信出力を,この一次放射器に給電し,受信の場合は一次放射器の出力を受信機に接続する。
インマルサットシステムでは,Lバンド帯においては送信・受信ともに右旋円偏波が用いられる。一次放射器のクロスダイポール空中線は,図6・22に示すように空間的に直交した2組のダイポール空中線を互いに90度位相をずらして給電することにより円偏波を得るものである。
クロスダイポールのみでは,クロスダイポール面の前方及び後方に逆向きの円偏波が放射されるので,クロスダイポールの後方約1/4波長の位置に反射板を置き,エネルギーの大半をパラボラ反射鏡方向へ向けるようにしている。クロスダイポールから前方へ放射された電波と反射板からの電波とは合成され,パラボラ反射鏡は合成された電波を反射し,鋭い指向性の円偏波の電波を放射する。