日本財団 図書館


R1,R2,R3,とR4,R5,R6はそれぞれTr1 Tr2のバイアス回路を構成する。C5,C7は図3・2,図3・6のCEに相当するもので,容量は低周波用のものに比べて小さくてよい。CN1,CN2は中和コンデンサで,2・3・3の(4)で述べたhr(電圧帰還率)が,周波数の高くなるにしたがって大きくなり,増幅作用が不安定になることがあるので,これを打ち消すためのものである。これがなくても増幅作用が安定な場合は不要である。

(2) 電力増幅回路

これまで述べてきた増幅回路は小電力用のものであり,出力として増幅された電圧を得ればよいというものであった。しかし,例えばスピーカを鳴らして音を聞こうとする場合には,音のエネルギに相当するエネルギをスピーカに加えてやる必要があり,このためにはいままで述べてきた回路に比べて,大きな電力を出力として取り出せる増幅回路が必要である。

図3・14(a)に電力増幅回路の一例を示す。これは図3・6のトランス結合増幅回路とほとんど同じ形をしている。しかし大電流が流れるので,R3中での電力の消費を小さくするためにはR3の値を小さくしなければならず,その結果としてR1,R2の値も小さくする必要がある。また,大電流によりトランジスタの温度が上がりやすく,動作点がずれて波形がひずむことがあるし,極端な場合にはトランジスタをこわすことがある。これを防ぐためにR2の代わりにサーミスタを利用することがある。

この回路では,信号のない場合でも常に大電流が流れているので,無為に電力を消費していることになる。これを防ぐための回路として,図3・14(b)に示すようなプッシュプル電力増幅回路と呼ばれるものがある。

この回路はトランジスタを2個用いており,図3・14(a)の回路を2つくっつけたような形をしている。図3・14(b)の回路で,バイアス抵抗,R1,R2,R3は2つのトランジスタに共通で,信号のない状態ではベースバイアス電流はほとんど流れないようになっている。交流信号が入力に加えられたとき,信号が(+)ならばTr1が働き信号を増幅する。信号が(-)のときはTr1は働かないが,今度はTr2が働き信号を増幅する。すなわち,個々のトランジスタでは完全な増幅はできないが,それぞれが(+)側,(-)側の信号成分の増幅を分担し,2つが組みになって完全な増幅回路として働いていることになる。

図3・14(b)の回路のトランジスタのようにバイアス電流をほとんど流さず,

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION