4.4微係数の推定
4.2節の4通り(a〜d)の方法により求めた各微係数の値と、それらを(7),(8)式に入れて計算した力とモーメントについて考察する。
表4-4に求めた微係数の値を示す。微係数の値は、横方向の力では回帰の方法によって最大4割程度の違いが見られる。一方旋回モーメントでは横方向の力と比べて各回帰法の違いが小さい。
これらの微係数から(7),(8)式を使って計算した力とモーメントを(1),(2)式により求めた流体力の計測データと比べたのが図4-7〜図4-12である。横方向の力では微係数の違いにもかかわらず全体の力ほどの方法もほぼ同じ値であり、流体力の計測値とよく一致していることが分かる。このことは(7)の式による回帰分析がトータルの力は表現しているが、横流れと旋回の成分に分離する点では問題を残していることを示している。一方、旋回モーメントでも良い一致が見られ、かつ微係数の値も合っていることからモーメントの微係数はうまく求められていると言える。
図4-13、図4-14は両舷機Z試験の回帰法(a)を例として、運動と舵のそれぞれの成分が全体の中でどのような割合を占めているかを示したものである。
この回帰分析では(7),(8)式のように線形なモデルを当てはめているが、実際には線形と言えるかどうかを調べるために、回帰法(d)について全体の力からvとδの成分を引いたものがrとどのような関係になっているかを示したのが図4-15、図4-16である。これを見る限り、ここで使っているデータはほぼ線形と見なしてよいと考えられる。