4.無潮流下での対水の船体運動(横方向の力と回頭モーメント)の把握
操縦性試験を実施し、こじまの操縦特性の調査にK-GPSを利用する可能性を確かめるとともに、その結果から、操縦性能の把握、あるいは操縦流体力特性の同定を行う可能性を検討した。試験は広島県の能美島の東、宮島の南の海域で実施した。リアルタイム用の基準局は付近の能美島の山上に設置し、オフライン用の基準局は広島大学工学部ビルの屋上に設置した。
図4-1にこじま船上におけるGPS受信機の配置を示す。また、表4-1に実施した試験項目を示す。
こじまは2軸2舵船であり、試験は通常の操縦状態のように2軸2舵を連動して操縦する形で実施したものの他に、片舷機のみを使用した場合の試験を併せて実施した。試験結果から、横方向の加速度や旋回角加速度が求められると、その方向の力とモーメントが分かることになるが、これは船体運動による成分と操舵等の操作手段に依存する成分からなる。この船体運動による成分は旋回による成分と横流れによる成分の和であるから、両成分の分離が必要になる。
ところが通常の試験では、旋回と横流れがほとんど比例した形で生じるために両成分の分離が難しい。本船の場合、2軸2舵船であるから、同じ旋回を両舷機を使う場合と片舷機で行う場合とでは、両軸間のモーメントが効いて、横流れと旋回の異なった組み合わせが得られると期待される。この差を利用して、横方向の力や旋回モーメントを旋回の成分と横流れの成分とに分離しようという意図でこのような試験を実施した。
図4-2に、試験時の旋回と横流れがどのような関係になっていたかを示す。これにより、試験全体を合わせて考えると旋回と横流れとは比例関係にはならず、これら二つの成分を分離できると考えられる。