3実船上におけるRTK-GPSの精度検定
3.1検定方法
試験に使用した海上保安大学校の練習船こじまの主要目を表3-1に示す。
実際にRTK方式で船位の計測を行うには、地上の基準局から船上の移動局へ計測データの転送が必要になる。このデータ転送にはいずれにせよ無線送信を行うことになるが、電波規制の関係で手段が限られることになり、実際上、利用可能な特定小電力の無線通信機でどの程度まで海上でデータ転送が可能かを確認する必要がある。この確認も兼ねて、練習船こじまに移動局を搭載し、呉から広島に移動中のこじまの船位を計測し、精度検定を行うとともに、複数の移動局を組み合わせることによって船首方位、回頭角速度等の運動検出の可能性、その精度を調査した。
基準局は呉から広島までの間で特定小電力の通信装置で通信可能にするために、図3-1に示すように、付近の猪山の山上に設置した。図中の座標軸の原点が基準局の位置である。また、船上には図3-2のように、操縦室上と船首尾のそれぞれに計3つの移動局(アンテナ)を設けて計測した。同時に、ジャイロセンサーも設置して回頭角速度の計測も行った。計測の方式としては時々刻々の基準局データの転送を受けて行うRTKの他に、データ転送は行わずにそれぞれに計測データを蓄積しておいて後でオフラインでキネマティック方式で船位を求めるK-GPSを採用した。これは、もしRTKの電波が途切れた場合にもデータを取得し、後の運動等の解析に利用できるようにするためである。
まず、地上からのデータ転送については途中に障害物がない場合には7kmから10km程度は十分にデータ転送可能との結果が得られ、操縦性能試験や来島海峡での計測に十分に利用可能であることが分かった。ただし、アンテナの位置と船の向き等の関係により、距離が近くても電波が途切れることがあり、アンテナの設置位置には十分配慮の必要があることがわかった。
この計測の場合には、船の位置を、調査対象としているGPSの精度以上で測る方法がないところから、個々のGPS測位結果の直接の検定は難しいので、船上に固定した移動局間の距離から水平位置精度の確認をする、あるいは船上の移動局間の方位と既存のジャイロ測位結果との比較を行う等で、精度の確認を行った。