2固定点におけるRTK-GPSの精度検定
2.1検定方法
ここで用いた測位システムでは、位置が既知の固定点に基準局を置き、その距離情報を用いて、計測すべき移動点の距離情報に含まれる誤差成分をキャンセルするディファレンシャル方式に加え、両点の距離情報の精度を上げるために電波の到達時間とともに、搬送波の位相情報も利用するキネマティック方式を採用した。この搬送波は波長19cmの電波であるので、仮に1波長を10分割、36度まで位相が分解できると1.9cmの距離の分解が可能になる。したがって、RTKの場合、レーンの認識ができるか、レーンの中での位相の分解がどの程度できるかが精度を決めることになる。レーンの認識を誤った場合、サイクルスリップと呼ばれる、値が搬送波の波長の整数倍だけジャンプする現象が現れる。またキネマティック方式で計測するには、衛星の配置等に一定の条件が必要であると考えられる。
最初の段階として、移動局を固定して、その精度を検証した。広島大学工学部の8階建てのビルの屋上に基準局、移動局を約7m離して設置し、計測を行った。付近には24.78m離れて高さ5.84m、幅15.0mの建物の障壁があり、基準局から3.7mの位置に径10.4cmの避雷針用のポールがある。途中からはこのポールから距離をもう少し離すように、基準局の位置を移動した。
この条件で1996年9月24日から1997年1月17日の間に15日間測定を行った。
2.2RTK作動時の精度
図2-1にRTK作動時の2局間の距離の計測例を示す。この図の範囲内での最大値は7.06cm、最小値は7.02cmで、標準偏差は0.396cmである。ほとんどが±1cmの範囲に入っており、RTKは高精度で計測が可能であると言える。
2.3RTKが作動する条件
RTK作動時には高精度が得られるが、全ての条件下で可能になる訳ではない。応用を考える場合、どのような衛星条件までRTKでの計測が可能かは重要な指標となる。図2-2には利用可能な衛星数別のRTK作動の確率を示しているが、7個捕捉できればほぼ完全に、5個以上では90%以上、RTKが利用できることを示している。4個の場合、約50%の作動が見込まれる。また、衛星が7個以上捕捉できた時間は全観測時間の約69%、捕捉個数の平均は6.9個であった。5から6個の衛星の場合にどのような配置でRTKの利用が可能になるかは実用上重要と考えられ、幅広い応用を考慮すると、さらに長期の観測データに基く検討が必要と思われる。
RTKが作動しない場合の精度については、本来はDGPSの精度が確保されると考えられたが、今回の計測では予想に反して単独測位に匹敵する相当に大きな誤差が生じている場合があり、今後の検討課題である。