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図-4-17に示した外カ-(修正)舵角の関連において、潮流影響を把握するための指標は、種々の観点から候補をあげることができる(図中網掛け)。

すなわち、

?外力の正横方向の成分(正横方向の潮流速)・・偏位を引き起こす主要因である。

?斜航角・・・船首方向と重心の移動方向のずれであり、操船者が知覚できる。

?偏位量・・・制御則にとって(修正)舵角決定の直接の要因である。

?(修正)舵角・・・外力(潮流)の影響に対する手当ての必要量である。

いまここで、指標間の関連を検討するにあたり、比較を容易とするために正横方向の潮流速以外の各指標をそれぞれの基準値で正規化するものとした。

斜航角の基準値・・・0.25ラジアン(約14.3 deg)

操船者の感覚として10°〜15°の斜航角が生じる状況では操船の自由が損なわれているとの印象が強く、許容の限界であるとのヒアリング結果がある。そこで、自動制御における単位系(ラジアン)では0.25(約14.3°)が許容限界の斜航角に該当するものとし、これを基準値とした。

偏位量の基準値・・・自船船長の半分(0.5L)

今仮に目標航路と平行に横方向に偏位した場合、目標点(2L先の目標航路の点)への方位と自船針路との間に差密十路差)が生じる。船体制御にあたって針路差の許容限界も0。25ラジアン(約14.3°)と考えた場合、0.25ラジアンの針路差を与える偏位量は0.5Lとなる。

0.25≒Arcsin(0.5L/2L)[ラジアン]

(修正)舵角の基準値・・・35°

来島海峡の通峡時においては、ハード(舵角35°)を用いて針路制御が行われることも往々にしてある。(このとき、必ずしも制御不能の状況ではなく、通常取りうる舵角として使用されている)そこで、基準値は舵角の最大値である35°とした。

(2)操縦シミュレーションの結果

図?-4-18から図?-4-23に小型船(船長75m)および大型船(船長200m)の航跡図と各指標(正横方向の潮流速、斜航角、偏位量、舵角)の正規化した値の時系列グラフを示す。

また、シナリオごとに正規化した指標値の平均値を求め、図?-4-24にそれぞれの関連を示した。図?-4-24に示した通り、各指標間にはそれぞれ高い相関が認められる。

したがって、潮流の影響を表すにあたっては、正横方向の潮流速、斜航角、偏位量および(修正)舵角のいずれを用いても妥当であると考えられる。

特に、潮流による安全性への影響を議論する場合には、距離の次元を持つ偏位量を用いることが望ましく、また、潮流による操船者の操縦に対する困難感への影響を議論するためには、操船者の持つ許容限界との対応がとれている斜航角を用いることが望ましいと考える。

 

 

 

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