数値計算の対象とした船は表?-4-1に示すとおりであり、被追越し船Ship 1と追越し船Ship 2は排水量の異なる相似な船型である。追越し船は船長とL2=175mのコンテナ船であり、被追越し船は総トン数500GT程度の船を想定して船長L1=48mとした。被追越し船と追越し船の船長比L1/L2はおよそ0.274である。
図?-4-2および図?-4-3に被追越し船Ship 1および追越し船Ship 2に作用する横力および回頭モーメントを示す。相互干渉力の計算におけるShip 1、Ship 2の船速はU1=10kt、U2=15ktであり、Ship 1とShip 2の間の側方距離Sp12については、追越し船の船長L2の0.3、0.5、0.7倍の場合について行った。なお、横力F1、F2および回頭モーメントM1、M2の推定結果は次式にしたがって無次元化して示している。
まず、図?-4-2(a)、(b)は被追越し船Ship 1に作用する横力および回頭モーメントの無次元値CF1、CM1をそれぞれ示している。横軸は2船間の船長方向の距離St12を追越し船の船長L2で無次元化した値を示しており、Ship 2がShip 1を追い越すのに伴ってSt12/L2の値は負から正へ移動する。すなわち、St12/L2<0の場合はShip 2がShip 1の後方から次第に近づいている状態、St12/L2=0.0はShip 1とShip 2が真横に並んだ状態、St12/L2>0はShip 2がShip 1を追い越した後の状態をそれぞれ意味する。また、図中の実線、破線および一点鎖線はそれぞれ2船の側方距離が0.3L2、0.5L2、0.7L2の場合の推定結果を示している。
図?-4-2(a)によると、Ship 1の船体に働く横力(CF1)の一般的な傾向として次のようなことがわかる。まず、St12/L2=-1.0付近において、追越し船Ship 2から遠ざかる方向の力が作用している。St12/L2が-0.6付近を過ぎると逆にShip 2に引き寄せられる方向の力が作用し始め、再びShip 2から遠ざかる方向の力が作用している。図?-4-2(b)に示した回頭モーメント(CM1)については、St12/L2=-1.0付近から船首をShip 2に対して外側に回頭する方向のモーメントが作用し始めSt12/L2=-0.4付近でその値はピークとなるが、2船間の船長方向距離が近づくにつれてモーメントの値は次第に小さくなっている。さらにSt12/L2=0.0を過ぎ、Ship 2がShip 1を追い越した後は、モーメントの方向は逆方向に転じ、St12/L=0.4付近でその値はピークを迎え、次第に減少している。また、横力、回頭モーメントともに、2船間の側方距離が大きくなるにしたがってその値は小さくなっている。この時のShip 2に作用する流体力の推定結果を示す図?-4-3においても同様な傾向が現れているが、流体力の大きさはShip 1に作用するものと比べて非常に小さな値となっており、2船間に作用する相互干渉力の影響は、追越し船よりも被追越し船の方が大きいものと思われる。