・上記3つの要素に当て舵量を加え、この4つの要素に重み付けを行い、積算した値をE値として定義する。重み付けの方法を自動制御(オートパイロット)の考え方にしたがって表現すれば、E*値は、目標値からの誤差を表す評価関数と考えることができる。
・上記E値に、自船の速力、また潮流等の外力の大きさによるある係数Hを乗じた値をE*とすると、同E*は、操船者の要素を考慮した操船困難度を表す指標値となる。
以下、操船困難度を表すE*の概要を記す。
操船と言う船体運動の制御が針路、位置および回頭角速度を制御することによって達成されることに注目し、この3つの要素を用い、自動制御と同様な重み付けをした目標値からの誤差を表現する評価関数を考える。具体的には、(4)式で表されるものである。

(4)式における各項は、左からそれぞれ回頭角速度、方位偏差、横偏差、当て舵角に関する項である。_
また、操船者の要素を考慮した困難度評価をE*とすると、(4)式で算出されるど値ととE*値との間は、次の(5)式で表現できることが既存の研究等により明らかとなっている。

ここでHは潮流速、船速比の関数であり(6)式で表現される。係数k,pはシミュレータ実験で求められ、0.7、1.5を各々用いることが適当であるとされている。
なお、同式算出に用いた潮流速度は来島海峡中水道最狭部の潮流速度である。

このように表現される潮流等を考慮した操船困難度を表すE*(=E・H)を評価指標として用いると、たとえば、来島海峡を転流時に航行するとE・H=20であった船舶が、流速2.0m/sec時には、E・H=30などと表現することが可能となるものである。
同指標値を用いた船舶航行の安全性評価に関する検討事例について、添付資料にその概要を記す。
・シミュレータ実験により操船者の主観的操船困難度評価Rを求めることにより、R=f(E*)の関係を把握することができ、最終的には総合的な航行困難度を評価することができると考えられる。
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