このような現状から、GPSのお膝元である米国はじめ世界の多くの国が、将来ともGPS測位精度に満足せず、また利用信頼性を向上するためDCPSを採用し、整備を進めている。
IALAが昨年4月に集計した世界各国のDGPS整備状況は表3のとおりであるが、最近は中国から大連、泰皇島、天津、青島、上海、海南の6カ所にDCPS実験局を設置した旨の連絡を受けた。
なお、IALAは海上用DGPSは暗号化せず世界のあらゆる船舶に無償で提供すべき、と勧告しているが、イギリス、アイルランドの10局ばかりのDGPS局は暗号化され有料のため、利用には注意を要する。
米国の現状
米国コーストガードは米国における中波DGPS局の設置、保守および運用を担当しているが、DGPSに限らずGPSの民間利用に関する公報をはじめ、連邦政府とユーザーとの取りまとめ等を行っている。
コーストガードの窓口はナビゲーションセンター(NAVCENと略して呼ばれている)で、住所、電話、FAX、インターネットのホームページアドレスは図1(下部)の通りである。
インターネットではGPSをはじめDGPS、ロランC、後述のCGSIC情報、一般無線航行情報、最新無線航行情報、地域海上警報、海図注文案内・プレジャーボート安全情報、海上無線通信、国際流氷パトロール報告等の項目別で情報公開している。
NAVCENと民間のGPSユーザーとの関係は図1のようになっている。
航行案内サービス(NIS)はGPSの運用状況を地上のコントロールセンターや国防総省等から入手して民間ユーザーに提供しており、あわせてコーストガードが運用しているロランC等の情報提供も行っている。
民間GPS委員会(CGSIC)は、連邦政府と民間CPSユーザーとの情報交換機関で、企業や大学を含む約400人で構成され定期的な会合が持たれている。
PPSプログラム事務局(PPSPO)はPPS(軍事用の精密測位システム)の利用権利のあるユーザーのために設けられた事務局である。
DGPS担当部はコーストガードが整備している中波DGPSに関する広報窓口で、最新情報では本年1月1日現在で53局のDCPSを2カ所のコントロールセンターで監視・運用中である。DGPS局の配置状況は図2のとおりで、海岸線と河川近辺以外の内陸部にも置局されているが、陸軍との協力関係があるため、DGPS技術を有するコーストガードが米国全土にわたって建設から保守、運用まで担当しているとのことである。