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5. 調査検討結果の概要

本報告書は、調査目的にも述べるとおり、船舶交通が輻輳すると共に複雑な交通流を形成する湾内交通環境下における大型タンカー受入に当って、航行上の安全確保と発災時の緊急的初期対応に必要となる航行支援等の航行安全諸対策について調査・検討し、その結果をまとめたものである。

ところで、東京湾内海上交通の安全確保に必要な船舶航行環境の整備、すなわち船舶交通流の整備に寄与する交通体系と通航方式のあり方を中心とする航行安全対策の策定とその対応については、これまでも多くの調査研究が進められてきている。

しかしながら、東京湾内への大型タンカー受入に当っての、その航行水域、特に海上交通安全法施行規則に基づく中ノ瀬航路航行義務の適用外とされる喫水17mを超える大型タンカーの航行に供される中ノ瀬西側水域は、船舶交通の輻輳度が高いと共に、同水域の西側は大型港域と直結し、これら港域への入出港船舶の操船水域でもあり、漁業操業にも供される等、操船挙動の著しく異なる船舶間の競合の場となっており、その中での操縦性能の劣る操船上の制約の大きい大型タンカーの航行は極めて操船困難度の高い水域となっている。

去る7月2日にはダイヤモンドグレース号の坐礁とこれに伴なう他におよばす影響度の高い油流出による二次災害を誘発する海難発生をもたらした。

このようなことから、本調査検討にあっては特に中ノ瀬西側海域における大型タンカー航行時の安全確保に中心を置き、その安全対策について調査検討することとした。従ってこれに関連する湾内全体の間接的対策等についての調査検討は必要最小限の範囲で問題点の指摘にとどめた。

調査検討の結果は、第?編に詳述する通りであるが、安全対策の概要は以下の通りである。

 

(1)中ノ瀬西側水域航行時の基準の進路(経路)と操船法について

当該大型タンカーが中ノ瀬西側水域を北航するときの航行路は、中ノ瀬B〜D灯浮標を結ぶ線とその西側1,000mの範囲内の水域となっている。

この水域での航行に当っては、以下の基準の進路と操船法を遵守するものとする。

1)基準進路(経路)の選定

?水域側端線からの離隔距離の確保

中ノ瀬西端の浅水域を考慮した灯浮標A〜Dをそれぞれ結ぶ線との最小離隔距離350mおよび海上保安庁の行政指導に基づく南航船航行水域の東端すなわちB〜D灯浮標を結ぶ線の西側1,000mラインとの最小離隔距離200mをそれぞれ確保する。

?基準の進路(経路)

?に述べた水域側端線に対するそれぞれの最小離隔距離の確保により、当該大型タンカーの航行に供される通航路の幅員は約450mとなる。

 

 

 

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