度まで下げられないための損失と,シリンダ内の圧力を大気圧まで下げられないための損失は,排気タービン過給機によりその一部分を回収することが出来る。
シリンダ内のピストンの行程は,そのエネルギ利用のためには,シリンダ内のガスが大気圧まで膨張するに十分な長さをもつことが理想であるが,これには無限大のピストン行程を要することになる。実際の機関では,ピストンが下死点に達してもシリンダ内の圧力は大気圧まで膨張出来ず,2〜3kg/cm2を保っている。したがって,下死点近くで排気弁が開くと,高温の圧力ガスは排気管内に急激に膨張,排出される。この排出エネルギをブローダウン・エネルギと呼ぶ。
排気管内のガスは,その末端にあるタービンノズルで絞られ,更に速度を増加して,タービンの翼にあたり,これを回転駆動する。これと同軸にコンプレッサがあり,空気を吸込んで圧縮して機関へ送る。
これは排気ガスのエネルギの一部が,圧縮空気の形で機関に回収されることになる。この量は燃料熱量の7〜10%にあたる。このように過給によって,機関の出力を増加するのみならず,その捨てられていた熱量を回収して機関の熱効率を向上させることが出来る。