3.3 裾付上の注意
1) 据付け・芯出し
可変ピッチプロペラの据付けは固定ピッチプロペラの場合と原則的には変わるところがないが,前項で述べたように変節軸には大きな力が作用するので変節軸と変節装置の連結は十分強固に行わなければならない。
2) ピッチ零点の確認
プロペラと変節装置の翼角合せは各製造所とも容易にできるように,要所にチャンバゲージをとっているので据付け時はこれを確認しなければならない。普通,基準としてはプロペラピッチ零点を示すマークが,プロペラボス付根部とボス,プロペラ軸と変節軸および変節装置など所要個所に打刻してある。
3) 油圧系統の配管および清浄
油圧系統の配管で最も注意すべきことは,ポンプの吸入側よりエアーを吸い込まないようにすることである。エアーがサーボシリンダに入ると変節作動が不確実となる。
油圧機器は特に精密に製作されているので,油の中のゴミ,異物等により,調圧弁の作動不良,油温上昇,ポンプの異常摩擦等の事故を起こすことがある。これを未然に防ぐためには各機器,パイプの取付け前には必ず酸洗い等による清浄を実施し,配管後はフラッシングオイルによって製造者が指定する方式に従って入念にフラッシングを行う必要がある。
4) 進水時の注意
普通可変ピッチプロペラは推力軸受あるいは主機関を据えてから進水させるが,万一推力軸が連結されていない時は,進水時の衝撃によって軸系が前後に移動しないように,船体より支えを出しておく必要がある。
進水前には,予備ポンプを電動駆動して翼角変節の確認運転を行う必要がある。また重力油タンクを充たし,プロペラボスに油圧をかけ,油密を検査し,ボスおよび翼より油漏れの無いことを充分確かめておく必要がある。
5) 変節油タンク
変節装置の台板に油を溜めている構造のものはよいが,別に変節油タンクを設けている形の可変ピッチプロペラでは,船体のトリムも考慮して油が流れ易いような位置を選定し,且つビルジがはいらないよう注意しなければならない。
6) 重力油タンク
プロペラボス内に水圧より若干高いヘッドを持たせるために通常,水面より2.5m以上の位置に重力油タンクを設置する必要がある。このタンクにはゲージグラスをつけ油面に注意せねばならない。
途中のパイプはできるだけ曲りを少なくして重力油供給軸受に導かれるまでの圧力損失を少なくするよう注意すること。